第60回 深刻な若年層のショッピングセンタービジネス離れ!その理由と対策とは

西山貴仁(株式会社SC&パートナーズ 代表取締役)
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コロナ禍はSC業界にも多くの影響を及ぼしたが、その中でも顕著なのが人材の流動化だ。この2年間、ショッピングセンター(SC)企業、テナント企業、関連企業問わず多くの転職挨拶メールが届き、今も続いている。この現象を下に今号ではSC業界からの人材流出について考えていく。

Charnchai/istock
Charnchai/istock

日本の雇用環境とSC業界での人材の流動化

 戦後日本企業は、新卒一括採用、年功序列、終身雇用の3つを基礎とした採用と育成を行い、OJTによる教育訓練と組織間異動によるキャリアパスによって年功賃金とポストを与えた。

 労働者も生涯雇用を約束され、よほどのことがない限り解雇されず社会保険や年金制度と共に不安なく生涯を終える素晴らしい仕組みだった。

 また安定した雇用環境は長期的な取り組みを可能にし、バブル期までは十分に機能しメリットも多かった。

 しかし景気は低迷し、成長を実感できない中でも人材の流動化は進まなかった。日本のイノベーションは失われ、30年にわたる長期低迷を引き起こすわけだが、近年の社会構造の変化は速く、入社した会社が将来存続する保証もすでになくなっている。

 SC業界は元々、人材の流動性の高い業界ではあったが、コロナ禍に入りいっそう加速した。

 その動きは、「SC企業→他のSC企業」「テナント企業→他のテナント企業」といった同業他社への動きばかりでなく、「SC企業⇔テナント企業」の相互移動、「SC企業から異業種」への転出などきわめて多様な動き方を見せている。

 また、かつて言われた「転職上限35歳説」もなくなり、今はSCの館長クラスにまで人材流動化の波は押し寄せている。

SCを取り巻く環境はコロナ禍に180度転換 

 2019年までの日本は、アベノミクス、国家戦略特区、インバウンド3000万人、東京オリンピックに万博にIR(カジノ含む統合型リゾート)など豊富な話題とともに、SC業界は比較的旺盛な個人消費に支えられていた。

 ところが2020年、われわれを襲ったコロナ禍によってインバウンドは消失、オリンピックは延期、IRはカジノ企業が日本撤退。そして緊急事態宣言による半ば強制的な店舗の休業、国民に対する行動の自粛要請、飲食店でのアルコール提供の禁止、豪奢品を扱う店舗の休業など、今から考えると意味不明な規制が次々と出され店舗の売上は急落した。SCではテナントの退店が相次ぎ、当然、新規出店は滞り、全国に空き区画が発生した。

 結果、SC担当者は、

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