過去のヒットからAIが予測し売れる服を自動生成!?アパレル業界の課題とこれからとは

河合 拓
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ESG経営はまやかし、企業の重石になるだけ

 次に流行のSDGs(持続可能な開発目標)を取り巻く課題解決だ。特に商社にとって最も頭が痛いテーマだ。

 サステナブル対応することでブランド価値をあげられるのは一部のハイブランドだけで、中価格帯の企業にとっては単なるコストになっている。 
 そうしたなかで解決策の1つが、工場のCSRの取り組み内容をスコア化、一定スコア以上の企業にはインセンティブを政府が付与する、といったものだ。
 企業に放任したところで、自然にSDGs対応が価値化することなどはない。単にコストとなり、企業業績の重石となるだけだ。

 「大量生産、大量廃棄」を批判するが、売れるかどうかがわからないものを、「初めから作らない」ことなど不可能だ。となると、売上至上主義からの脱却しかない。企業価値を計る投資家の良心も問われる問題である。

  このままでは、日本のアパレル産業は、ユニクロ(ファーストリテイリング)と外資SPAにやられてしまうだろう。日本市場は、ユニクロと大手外資系企業だけになる日も近い。
 日本人が掛け声をかけても産業界は何も変わらない。
 「昨対」(売上前年度比)を追いかけると、前年割れになればさらに追加投入して在庫が増えることが悪循環となり、市場の縮小と反比例して在庫がどんどん増えてゆく。
 そこで、価値ある商品の生産ロットを細かくすることと、アパレルが素材を備蓄することが解決の方向だ。

 アパレルは、製品在庫を持つのと半製品在庫をもつが、「どちらが低リスクなのか」を真剣に考えてもらいたい。商社の粗利率ではリスクはとれないし、工場は零細企業で在庫など持つ体力は無い。

世界に打って出ず、日本に巣ごもるアパレル産業の行末

metamorworks/istock
metamorworks/istock

 次が海外戦略だ。

 日本市場が縮小する中、日本のアパレル企業は世界化に向き合わず、国内で潰し合いをしてきた。
 各社が相変わらず「昨対」商売をするものだから、総投入量の約半分が売れ残る狂気の事態が、「常態化」しているのである。
 日本の高齢化率は2229.1%だが、2040年には35%に上がる。人口が減り続けるなか、力のある人間は海外へ出てゆくことになる。

 実際、世界の人口は増え続け、特にアジアではアパレルは成長産業だ。やり方によっては成長市場の果実を得られるのに、日本にとどまり潰し合いをやる意味が見えてこない。 
 さらに、SDGsによって、供給量を増やすことが全く通用しなくなってきた。このままではビジネスが行き詰まるのは必然だ。

 オンライン消費が拡大し消費者の行動変化が起きてきたとはいえ、現実は、まだまだアナログで、経験と勘で物事を進め手書きが業界の常識となり続いている。

 

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