新しい!ダイソー、「1 兆円1万店」に向け進化する組織、売場、商品、フォーマットとは

雪元 史章 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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「300円ショップ」が新たな成長エンジンに

ダイソー、スリーピー、スタンダードプロダクツ

 その“変革”は、さまざまな領域ですでに進んでいる。まずは、店舗開発だ。

 大創産業は19年にCI(コーポレート・アイデンティティ)を刷新し、それまで散在していたさまざまな屋号を「DAISO(ダイソー)」に統一。ピンクを基調としたロゴを導入し、店舗の内外装もスタイリッシュなデザインに切り替えを進めており、従来の100円ショップにあった雑然としたイメージからの脱却を図っている。

 加えて、多様化する消費者のニーズや嗜好に対応するべく、新業態の開発にも動く。まずは18年、300円ショップ「THREEPPY(スリーピー)」を立ち上げる。メーンターゲットに据えた若い女性に向け、かわいらしいデザイン・色づかいの雑貨を中心に販売。価格と実用性を追求したダイソーとは一線を画した品揃えは人気を呼び、同業の300円ショップの事業譲受により商品開発力も向上。直近では「大人かわいい」を新たなコンセプトにリブランディングを行い、カラフルながらも落ち着いたテイストの商品開発を行い、顧客層の拡大を図っている。

 そしてもう1つ、メディアでも大きく取り上げられたのが、「Standard Products(スタンダードプロダクツ)」の出店である。「ちょっといいのが、ずっといい。」をコンセプトに、ダイソーが“新たなスタンダード”を提案するという新業態だ。

 Standard Productsでは、ダイソーともTHREEPPYとも異なる、汎用性の高いシックで落ち着いたデザインの商品を、生活雑貨に特化して展開する。また、余剰が問題となっている国産の間伐材を加工したエッセンシャルオイルや箸、「熊野筆」を使った化粧ブラシや岐阜県関市名産の「関の刃物」など、社会課題の解決を図る商品や日本各地の伝統工芸品を提案。それらを300円を中心とするリーズナブルな価格帯で販売するという斬新さが大きな注目を浴びた。

 他方、こうした300円ショップ業態の展開についてメディア等では、昨今の原材料・物価高騰を背景にした施策として論じられることも少なくない。しかし矢野社長も商品開発担当者もこれを否定。あくまでも顧客ニーズが多様化するなかでプライスラインも拡充した結果であり、100円商品を主軸とする考えに変わりはないという。

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記事執筆者

雪元 史章 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

上智大学外国語学部(スペイン語専攻)卒業後、運輸・交通系の出版社を経て2016年ダイヤモンド・フリードマン社(現 ダイヤモンド・リテイルメディア)入社。企業特集(直近では大創産業、クスリのアオキ、トライアルカンパニー、万代など)、エリア調査・ストアコンパリゾン、ドラッグストアの食品戦略、海外小売市場などを主に担当。趣味は無計画な旅行、サウナ、キャンプ。好きな食べ物はケバブとスペイン料理。全都道府県を2回以上訪問(宿泊)。

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