なぜ、個店経営のみが真の「判断力」を養うのか
米国モデルの「チェーン理論」が勧めるのが、上意下達のピラミッド型・ツリー型あるいは軍隊型、専制国家型の組織であるのに対し、個店経営では地下茎が並列する「リゾーム型」あるいは「全員参加型」の組織になる。
というのも、個店経営型チェーンの基本は、その元祖であるセブン-イレブン・ジャパン(東京都:以下、セブン-イレブン)が示したように、限定商圏の住民(人数)を絶えずカスタマー(回数)にし続けるため、リゾームの1本1本である個店ごとの判断力を養わねばならないからである。米国モデルのチェーン、たとえばウォルマート(Walmart)を日本流に翻訳したビッグストアチェーンよりも、セブン-イレブンの方がウォルマートとの共通点が多い理由もここにある。
とくに、多数のチェーンを前提に運営する流通業においては、それぞれの商勢圏・商圏固有の状況を考え、それらの店舗・商圏における日々の、かつ個々の店舗固有のアソートメントによって、カスタマーを迎える。ウォルマートよりはるかに狭い限定された商圏を対象にし、なおかつ直営ではなくフランチャイズという形態を選んだセブン-イレブンが、組織以外の点でウォルマートに酷似しているのは、論理的に考えればむしろ当然である。
個店の現場にいる者が、多くの「個人的な体験」を通じて初めて養われるものこそ、個店経営における「判断力」だ。
ダンスでも柔道でも剣道でも、個々の人間を相手に実技を繰り返さなければ判断力は養われない。俗にいう、「腕前が上がらない」のだ。同様に、流通業において養うべき判断力とは、その個店ごとの「腕前」である。
その道の歴史を記した秘伝書、あるいは師匠の手記を読めば、ダンスの腕前は上がるだろうか。腕前を上げる道は1つ、自ら考えながら稽古する、その回数を重ねることしかない。流通業で判断力を養ううえでも、それらとまったく同じプロセスを踏む必要がある。
たとえば、自店のアソートメントに対し、どんな客観的状況であるかで(大雨の時と台風の時とコロナ騒ぎの時、あるいは日曜の午後か土曜の午後か)、すべて固有の状況は異なる。開店時間中のいつ、どんなカスタマーが(年代とは限らない、同じ年代でも男女2人客と1人客では異なる)、どのような反応を示すかを、品目ごとにチェックして、そこから「なぜ、いくつ売れたのか」、あるいは
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