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中計スタート「新店のほか既存店活性化にも積極投資する」=ユニー前村哲路 社長

ユニー(愛知県/前村哲路社長)は、商勢圏各地で競争が激化しているのを受け、攻めの経営に舵を切る。来年、持ち株会社への移行を視野に、すでに公募増資などによる資金調達を実施したほか、今後は抜本的なグループ合理化策にも着手。それらを原資に来期(2014年2月期)を初年度に、積極出店や新規事業を含む「ユニーグループシナジー5ヶ年計画」をスタートさせる。同社のねらいは何か。前村社長に聞いた。

消費が低迷する3つの理由

ユニー社長 前村哲路(まえむら・てつろ)1949年生まれ。鹿児島大学教育学部卒業。1972年ユニー入社。2001年北陸本部本部長を経て、06年常務取締役に就任。07年2月から現職。63歳。

──2013年2月期に入っての業績は、いかに推移していますか。

前村 芳しい状態にあるとは言えません。昨夏は異常な暑さが続いたほか、節電志向の高まりによる需要があり、まずまずだったのですが、今年度はなかなか前年実績を超えることができていません。具体的には全店ベース(直営)で3月度が99.9%、4月度が95.9%。5月度は100.4%と持ち直したものの、6月度95.5%、7月度92.7%といった状況です。

──この原因をどのように分析していますか?

前村 消費低迷の原因は、3つの社会的な構造変化によるものであるととらえています。

 第一に、消費者の所得水準の低下です。現在、年収300万円以下の人は全体の約27%に及んでいるという調査があります。これは首都圏も含めての話なので、地方都市に限れば恐らく30~40%に拡大するでしょう。これが消費の厳しさにつながっています。

 第二に、過度な出店競争。食品スーパー(SM)のほか、勢いがあるのはコンビニエンスストア(CVS)とドラッグストア(DgS)。たとえば、CVSのセブン-イレブンは、1社だけで年間800~900店の純増ペースで出店しているのです。つまり1店あたり売上2億円とすれば、年間1600~1800億円が既存のどこかから奪われる勘定になります。ということは、従来と同じように事業を展開しているのであれば、既存店は前年をクリアできないのが当たり前の時代になっているのです。

 最後は、ネット通販の急成長でしょう。数年内にはSMマーケットと同規模の12兆円にまで拡大すると言われている。実際、日用品、雑貨に加え、一部の食品はネットで購入する人は少なくありませんし、今後も増えると予想されます。

──そのような中でユニーはどんな手を打っていきますか?

前村 これまでの価値訴求を主眼とした方針を少し見直し、頻度品については価格訴求に力を入れます。昨年度は価値訴求によってユニー単体では、過去最高益を達成していますので、この戦略自体は間違っていなかったと考えています。ただ、競合の現状や未来を考えると、低価格に対応せざるを得ないことも事実なのです。

──それが食料品・日用生活雑貨品など最大1300品目の値下げ発表になったのですね。

前村 そうです。第一弾として7月21日から、食料品250品目、日用生活雑貨50品目のあわせて300品目を一斉値下げしました。第二弾は9月21日から追加で食料品500品目、日用生活雑貨500品目の計1000品目を値下げします。

 さらにPB(プライベートブランド)「StyleONE(スタイル・ワン)」や開発商品「毎得」にも購買頻度の高い食品を中心に低価格商品を随時投入します。「毎得」は現在40~50品目があります。すでに7月からは28円の豆腐、48円の納豆などを販売しています。

 ユニーとしては大きな方向転換になります。これにより消費者の支持を獲得、下期は上期に落とした分を取り戻したいと考えています。

商流合理化で70億円

──低価格戦略を推進するための原資は、いかに捻出するのですか。

前村 グループ企業の再編を進める一方、従来の仕事のやり方を見直し、利益改善していきます。

 その一環で、今年7月までに傘下にあったサークルKサンクス(東京都/中村元彦社長)の普通株式をすべて取得しており、9月中に完全子会社化の手続きを終えます。一方、社内に新たな組織を設け、商流や物流、商品などについて合理的な体制を再構築、価格訴求の原資を確保します。

 また、来年度(14年2月期)からは中期経営計画「ユニーグループシナジー5ヶ年計画」がスタートします。最終年度の18年2月期には、上記の取り組みを通じ100億円の利益改善を図ります。

 利益改善計画は、すでに取引先の新規開発や取引条件の見直しなど、前倒しで進めています。その分野を担当する部署として、今年8月21日付けで、社内にグループ商品企画部を新設しました。ここにはユニーとサークルKサンクス両社の社員を混在させています。

 同部の下には住居関連、和日配、洋日配、生鮮、飲料、菓子、加工食品の7分野の担当を置き、共同で新商品を開発していきます。来年度からは総勢30人の体制になります。

──では実際の「100億円利益改善計画」のプロセスを教えてください。

前村 持ち株会社を設立し、グループシナジーの最大化を図ります。ユニーとサークルKサンクスを合わせたユニーグループの改善額は60億円、サークルKサンクスのFC(フランチャイズ)加盟店は40億円の計100億円。ユニーグループでは初年度に7.5億円、3年目に47.5億円、5年目に60億円と年度ごとに目標を決め、段階的に改善します。

──その中、大きな改善が期待できそうな分野はありますか。

前村 実は、同じ商品でもエリアにより仕入れ先が異なっているケースが多いのです。この場合、仕入れ先を一本化したうえで、仕入れ原価の統一のほか、取引条件の見直しなど商流を合理化します。FC加盟店分を含めたユニーの改善は16億円、サークルKサンクスは54億円の計70億円と、最も高い効果を見込んでいます。

 物流にもメスを入れます。現状では各地にあるメーカーのセンターから、ユニーとサークルKサンクスのセンターへ商品が個別に配送されています。在庫の管理法もまちまちです。これを、新たに設置するマザーセンターを経由し、配送する体制に組み替えることで7億円の改善額を考えています。

 このほかにも現在700SKUある「StyleONE」を1200SKUにまで拡大します。これによって8億円の利益貢献ができるはずです。

──社内では計画を進めるための組織も着々と整備しているそうですね。

前村 はい、先ほどのグループ商品企画部のほかにも、すでにグループIT販促部、グループ品質管理部といった組織を立ち上げています。今お話しした計画も、それぞれの分野により担当部署を中心に改善を推進していく考えです。

「ミニピアゴ」、5年で300店

──この7月には、公募増資と伊藤忠商事(東京都/岡藤正広社長)を割当先とする第三者割当増資を実施しています。最終的な調達額である二百数十億円を何に投資しますか。

前村 来期以降、積極的に出店し、攻めの経営に転じていきます。ユニーではモール型SC(ショッピングセンター)や大型商業施設などを、少なくとも年間2店は出します。すでに準備を進めており、物件もメドがついています。また既存店にも積極的に投資します。毎年5店舗を建て替え、もしくはそれに近いかたちで、てこ入れしていきます。冒頭話したように、社会の構造的変化の影響で、既存店の伸長が見込めない時代になっているため、活性化させながら今の収益をキープしていく考えです。

 一方、サークルKサンクスはこれまで出店が少なく、過去5年間を見ると、総店舗数はほとんど増えていません。今後、毎年200店近い純増となるよう、こちらも積極的に新店を出します。

──サークルKサンクスは、日販額の伸長も目標のようですね。ポイントはどこに置いていますか。

前村 女性客の取り込みです。キーとなるカテゴリーのひとつは総菜。業界トップのセブン-イレブンさんと比較すると、総菜の売上高構成比は10%以上の差がついています。今後、積極的な商品開発で女性の支持を得られる品揃えを実現していきたい。

 もう1つはスイーツです。こちらは新たな什器を取り入れていきます。アラウンド型の冷蔵ケースなど、商品を効果的に見せることができるような什器を導入します。これらにより前年度、48万9000円だった日販額を、50万円半ばを目標に、業界2、3位のローソンさん、ファミリーマートさんの水準以上にまで引き上げます。

──一方では、狭商圏をねらった小型店である「ミニピアゴ」の展開にも力を入れています。

前村 17年までに現在の5倍にあたる300店(売上高600億円)を目標に拡大していきます。出店するのは首都圏。近く、ユニーとサークルKサンクスの物流センターを共有する体制へ移行しますが、これにより「ミニピアゴ」も効率的に店舗展開ができるはずです。

 「ミニピアゴ」は、商圏を“買物不便者”の多い半径500~800mと設定しています。競合店は少ないですからビジネスチャンスは大きいと見ています。

 ただ、「ミニピアゴ」は本拠である中京圏での事業展開は考えていません。中京圏には、近くに売場面積500~600坪のSMが多く、さらに多くの人の来店手段がクルマであるため、「ミニピアゴ」には向かないだろうと考えているからです。

──ユニーは高齢社会には、どう向き合っていきますか?

前村 毎月15日の年金支給日に、買物特典を付与するシニアカードを発行しています。現在、関東、北陸に加え静岡エリアで展開しているネットスーパー事業の一環として、高齢者が多い地域では、インターネットのほか電話やFAXでも注文を受けつけています。ほかにも、子会社のサンリフォーム(愛知県/坂野達哉社長)が掃除や家事全般の手伝いをするサービス「家事タスカル」をスタートさせるなど、徐々にサービスを広げています。

 さらに、高齢者や単身者へお弁当などを配達する「ミールサービス」も検討します。当社には、独自の店舗ネットワークがあります。中京圏だけを見ても、サークルKサンクスとユニーを合わせて1800ほどの店舗があります。これらは食事を、各家庭まで届ける拠点にもなり得ます。

 もう1つは、ネット販売のWebサイトを立ち上げることも検討しています。GMS(総合スーパー)やモール、CVSなどのリアル店舗と、バーチャルの世界を融合させられるのがユニーグループの強みだと思います。それらを活用し、高齢化など変容する国内マーケットにお役立ちのできるサービスを提供できればと考えています。

中国は3号店まで決定

──国内のマーケットは人口減少で縮小傾向にあります。その中で有力各社は海外、とくに中国への出店を進めています。ユニーも上海へ出店を計画されていますが、進捗状況はいかがですか。

前村 やっと正式契約までこぎ着けたところです。正式なオープンは来期(14年2月期)になる予定です。

 立地は上海市の内環状内にある一等地で、家賃は非常に高い。当然、場所に見合ったスタイルで出す必要があり、その意味では非常にシンボリックな店になります。食品部門だけはすべてユニーの直営ですが、それ以外の衣料、住居関連についてはテナント、もしくはコンセッショナリー(名前を出さない専門店)チェーンが中心の構成になります。

──中国での事業展開といえば、10年に中国の食品最大手、頂新国際集団と合弁会社を設立しています。

前村 国内と違って中国ではビジネスの勝手がわからないことも多く、リスクも少なくありません。そのため頂新さんとのアライアンスはとても心強く感じています。実は、上海での店舗展開は3店までは場所が決まっています。3号店は頂新さんが建設する商業施設に「アピタ」がテナントとして入る予定です。

 また3号店まではすべて内環状エリアを計画しています。しかし都心であるため物件の形、立地、商圏は多様であるのが現状です。つまりチェーンストアとして標準的な店を出すには不向きなのです。そのため3号店以降は、少し家賃が安く、物件も選べる外環状エリアでの展開を考えています。