インフレ下、スーパーマーケットの価格戦略の真髄は「お値打ち感」にあり?

宮川耕平(日本食糧新聞社)
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お値打ち感は、価格だけでは比べられない商品に宿る

留め型を主体に構成する「maruetsu365」も独自商品であることがポイント
留め型を主体に構成する「maruetsu365」も独自商品であることがポイント

 外食に対しての総菜、NBに対してのPBや留め型、このように見てくると、お値打ち感とは何か、いわゆる価格競争とは何が違うのか、スーパーマーケットの目指しているところが見えてくるようです。

 お値打ち感に求められる条件の1つは、購入対象をスイッチする際の選択肢であることです。2つ目は、それで粗利益を稼げること。3つ目は、購入客の満足を得られること。1~3は優先順位ではなく、全てが揃わないとお値打ち感が成立しません。これらの項目を満たすとなると、ほぼ必然的にオリジナル商品になります。NBは結局のところ、価格で判断されるからです。

 言ってみれば価格競争とは、従来品からスイッチしなくても済むようにする努力です。顧客にとっては支出を抑えられて、従来通り満足できるのでしょうが、今の環境下で粗利も従来通り残せるかどうか、厳しい戦略です。価格競争の打ち手は限られますし、成果は「高いか・安いか」だけです。

 ところが競争の舞台をお値打ち感に移すことで、やれることは広がります。もっとも、安いことが結局は最強かもしれません。しかし食品小売の実態をみれば、戦い方や勝ち方は、安いこと以外にあることも事実です。

 お値打ち感を追求する道は多様で、高価格にスイッチする選択肢もあるほどです。例えば健康やサステナビリティといった価値に対して、お値打ち感が認められれば「スイッチ」が起きます。

 イオングループのビオセボン・ジャポンが掲げる「オーガニックを日常に」は、オーガニック商品においてお値打ち感を追求する姿勢です。また、ライフコーポレーションが展開する「ビオラル」は、PBとしては高価格帯の位置付けになりますが、差別化と粗利率アップに寄与している「お値打ちPB」でもあります。

 期初にスーパーマーケットの多くが打ち出した商品戦略は、総菜とPBの強化でした。この半年で環境は一段とシビアになりましたが、下期に向けても戦略そのものは変わっていない印象です。いまスーパーマーケットが取り組んでいるのは、価格を下げる競争というより、お値打ち感を高める競争です。それは売価だけで比較されることを回避しつつ、粗利を確保する工夫と言えます。

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