コロナ反動と値上げで伸び悩む生協宅配 さらなる進化の伸び代と戦略… とは

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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コスト増や人手不足にDX推進で対応する

 こうした状況下で生協陣は、これまで進めてきた改革に再びアクセルを踏み込んでいる。

 まず、デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速だ。20年3月、日本生協連主導のもと、全国のDXを推進する「DXCO・OPプロジェクト(以下、DXコーププロジェクト)」を開始しており、成功事例を全国に波及し改革を図ろうとしている。なかでも先行している施策が、レシピを選択すると、必要な食材が、人数に応じて注文できるWebサービス「コープシェフ」だ。実証実験を通じて利用者の注文金額が2~3割アップする効果が得られたことから、東海、北陸、中国・四国エリアの計21県23生協に導入を広げている。

 またコープあいち(愛知県)では、AIによる効率的な設計で、配送コースの最適化を図る実証実験を実施。配送時間やトラックの走行距離が短縮する効果が出ている。

 配送現場に関連して昨今注目されているのが、働き方改革関連法による「物流の2024年問題」だ。配送員の時間外労働時間に上限が設けられることで、生協宅配でも人手不足の深刻化が予測されるが、前出のアンケート結果では「影響は少ない」と答える生協が最多で、生協本体とその配送子会社においてはすでに規定を遵守できている生協が多いようだ。

 しかし、生協の配送委託先では同問題による影響が生じ、委託料の値上げ等が発生してくる可能性は十分ある。また、コロナ禍による不況で一時応募が増えていた生協宅配の配送員の採用状況は、感染症の収束とともに再び悪化しつつある。こうした人件費高騰や人手不足の観点でもDXによる配送効率化は有効な対応策であり、早期の全国展開が期待されている。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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