日本での販売は序章 アダストリアが担うフォーエバー21の真の戦略とは

河合 拓
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フォーエバー21が苦戦した理由

フォーエバー21はチャプターイレブンを申請、その後ABGの元で再スタートを切っている(写真は2012年、zodebala/istock )
フォーエバー21はチャプターイレブンを申請、その後ABGの元で再スタートを切っている(写真は2012年、zodebala/istock )

 私は、そもそも、ファストファッション悪者説に異を唱える立場だ。なぜなら、ファストファッションを批判する人達に、それでは、ファストファッションの定義をいってみよ、と問うてもバラバラの意見がでてきて、彼ら彼女たちはなんとなく、使い捨てのイメージからゴミをだし環境破壊をしている、という安直な発想で「イメージ」で話していることが分かる。

 それでは、安くてファッショナブルな商品が楽しめるg.u.(ジーユー)は、ファストファッションなのかといえば答えに詰まるし、今、日本はアジアでも長期に経済が停滞し国が貧しくなっている唯一の先進国で、そもそも中価格帯などという服が、世界的には高価格で日本人の多くが手も出せないということも分かっていない。つまり、分析がデタラメなのだ。
 実際に、多くの若者と話してお買い物に付き合えぱよい。将来に希望が持てない若者達は、メルカリで古着を買ったりシーインで工場直販の激安ファッションを買ったり、工夫をしてファッションを楽しんでいる。
 こうした現実を評価している世代は、ほとんどがバブル世代で、「Z世代は環境意識が高い」を、「だから買う」(購買に至る行動を取る人は5%もない)と自分都合な解釈でお茶を濁している。真にSDGsを実現するなら、流通を半減させる政策をだすべきだ。具体的には、余剰在庫に「在庫税」をかけることで、市中に眠る100億枚ともいわれる隠し在庫を世に出して、残り物で美味しい料理をするがごとく、余剰在庫の換金率を高める努力を企業にさせるべきだ。

 さて今回の、フォーエバー21再上陸には、いくつかのカラクリがある。921日、22日の日経新聞の報道からそれを読み解いてみよう。
 まず、新生フォーエバー21は、SDGsに配慮し、80%MDは、アダストリアのサプライチェーンで生産され、アダストリアの企画でデザインされ、価格はg.u.はおろか、ユニクロよりも高額だという。さらに、型数は1/10に絞られ、リアル店舗も従来の迫力のあるかつての3000㎡の大型店舗から、これも1/10になる

 つまり、名前はフォーエバー21だが、売られている商品はアダストリアの衣料品とコスパもデザインも変わらないことになる。私も、このニュースが報じられたとき、アダストリアはZ世代を囲い込むシーイン対策だと思った。だが、ユニクロより高価ということになると、高価格に合理性を与える理由が、市場の5%未満に過ぎない「環境配慮コスト」だとすれば、なおさらかつてのフォーエバー21のファンは離れて行くことになると思う。
 さらに、リプロ(リプロダクションの略で、本国にデザイン使用料を払って他国で生産すること)マスターライセンスは、伊藤忠商事だ。したがって、新生フォーエバー21には、伊藤忠商事にライセンス料を払わねばならなず、当然、販売計画を下回ったときのペナルティ条項なども初期的にはかかる。つまり、世界標準のD2Cのような「破壊的ビジネスモデルへの転換」がない、ライセンス料を払う単なるリプロに過ぎないのだ。単なるリプロはこの10年で、ファーストリテイリングやTSI holdings、三陽商会など多くの企業がトライするも、ラルフローレンやバーバリーなどごく僅かな例を除いて成功していない。

 では、アダストリアの真の狙いはどこにあるのか?

 

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