東証プライム市場に上場し、売上高は7000億円超、4万人以上の従業員を抱えるコスモス薬品。まごうことなき「ドラッグストア(DgS)大手」であるが、意外にも開示される情報は少ない。そこで本特集に際し、コスモス薬品に詳しい業界人やメーカー営業担当など複数の関係者に接触。彼らからの情報をもとに、知られざるコスモスの全貌をとらえてみた。
宮崎のローカル薬局から全国チェーンに
まずはコスモス薬品の沿革について詳しく触れておこう。コスモス薬品は1973年に宮崎県延岡市で創業した「宇野回天堂薬局」を祖業とする。創業者は、現会長の宇野正晃氏だ。その後83年に有限会社コスモス薬品を設立、91年に株式会社化した後、93年に本格的なDgS1号店を宮崎市内に開業、ここから多店舗展開に舵を切る。
99年に売場面積1000㎡の店舗を出店すると次第に店舗サイズを拡大、2003年には2000㎡での出店を開始し、このころから現在のモデル(郊外立地、EDLP〈エブリデー・ロープライス〉、食品強化)を確立しはじめる。加速度的な出店拡大によって売上高も急増。04年に東証マザーズ市場上場、05年に福岡県福岡市に本社機能を移転、06年には東証一部上場と階段を駆け上がっていった。それと前後して、地盤としていた九州から飛び出し、四国、関西、中部、関東の順にドミナントエリアを構築。延岡発祥の薬局は、全国チェーンのDgS企業に成長したのだ。
ちなみに16年には、米ビジネス誌『フォーブス』日本版の「16年度版長者番付」において、宇野会長が資産額約1751億円で24位にランクインしたことが報じられたが、最新の22年度版では同約2520億円(23位)となっている。あくまでも同番付上での比較になるが、これはZOZO創業者の前澤友作氏(27位、約2200億円)や、メディア大手サイバーエージェント社長の藤田晋氏(40位、約1500億円)よりも多い。
創業から約50年でここまでの成長を遂げ、DgSはおろか国内小売市場全体で見ても大きな存在感を示すコスモス薬品だが、その全貌はベールに包まれている。メディアに向けた公式な発信は半期に1回の決算説明のみ。その他、店舗や経営層への取材は原則としてNGが貫かれている。そして店舗でも「撮影禁止」「同業者の調査禁止」を知らせる掲示が大きく出されており、“寄せ付けないオーラ”を放っている。
そこで本誌編集部は、元従業員やメーカーの元営業担当者など複数の関係者に接触を試み、コスモス薬品の内情を聞き出した。断片的ながらさまざまな情報から見えてきたのは、ほかの小売企業とは一線を画した独自の“コスモス文化”だった。
リーマンショックが戦略を大転換させた
コスモス薬品といえば、
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