東進続けるコスモス、迎え撃つクスリのアオキ、熾烈なフード&ドラッグ競争の最終的な勝者は?

中井 彰人 (nakaja lab代表取締役/流通アナリスト)
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コスモスを迎え撃つクスリのアオキ

 中部、関東に到達したコスモス薬品を迎え撃つのが、同じくフード&ドラッグの成長株、クスリのアオキである。

 生鮮まで備えたフルラインのフード&ドラッグで中部、北関東を席捲し、今や業界8位、売上3000億円超までのし上がった。生鮮まで品揃えして生活必需品のワンストップを実現したクスリのアオキは、出店エリアで、地場食品スーパーを次々と傘下に収め、フード&ドラッグに転換しつつ、勢力を拡大してきた。

 “コスモスの東進”と“アオキの勢力拡大”、直接対決するようになった両社は、フード&ドラッグの覇権争いの真っ最中だが、現時点ではコスモス薬品が優勢といっていいだろう。

※両社有価証券報告書より筆者作成

 図表④は、両社の地域別1店舗あたり売上高の推移を示したものだが、近畿、中部においてクスリのアオキの1店舗あたり売上高の低下傾向にあることがわかるだろう。コスモス薬品などフード&ドラッグの進出が相次ぎ、競争環境が厳しくなっていることがうかがえるが、クスリのアオキにとって不利なのは、地盤の中部エリアが主戦場となりつつあることであろう。コスモス薬品をはじめとした西日本勢の地盤である九州、中四国ははるか遠く、クスリのアオキが反撃する手がないのである。

熾烈な競争の最終的な勝者は……

 現時点で“最強”のフード&ドラッグであるコスモス薬品は、クスリのアオキとの戦いを優位に進めつつ、その地盤を通過して、さらに東進を続けていくとみられる。コスモス薬品、クスリのアオキなどのフード&ドラッグは、これから関東郊外部や東北などにも戦線を拡大して、熾烈なシェア争いが続いていくだろう。

 そうなると、当該エリアのドラッグストア各社、また、食品スーパー各社への影響も大きく、業界再編につながる可能性は高い。「関東郊外部」と書いたのは、「首都圏中心部」のような人口密集地では空地が少なく、出店コストも高いため、フード&ドラッグはなかなか進出しづらく、この競争エリアからは外れている、ということでもある。

 という前提で考えると、こうした競争激化に対して高みの見物でいられるのが、首都圏や京阪神などの大都市中心部に店舗網が集中しているマツキヨココカラだ。同エリアでのマツキヨココカラの店舗数は約1000店舗で、2位以下の3倍以上という、ほぼ逆転不能なシェアを持つ。

 彼らはフード&ドラッグと全面衝突することなく、競争に敗れた企業に手を差し伸べるかたちでM&Aを行っていくことができる。コスモス薬品を筆頭とするフード&ドラッグによる競争激化によって、競争の当事者は、勝者も含めてレッドオーシャンの中で相当に疲弊する可能性が高い。

 こうした事態を予想した上で、首都圏・京阪神中心部のトップシェア同士が戦略的に統合したのが、マツキヨココカラなのである。これからの地方、郊外の競争激化は、同社の思う壺であるのかもしれない。

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記事執筆者

中井 彰人 / 株式会社nakaja lab nakaja lab代表取締役/流通アナリスト
みずほ銀行産業調査部シニアアナリスト(12年間)を経て、2016年より流通アナリストとして独立。 2018年3月、株式会社nakaja labを設立、代表取締役に就任、コンサル、執筆、講演等で活動中。 2020年9月Yahoo!ニュース公式コメンテーター就任(2022年よりオーサー兼任)。 2021年8月、技術評論社より著書「図解即戦力 小売業界」発刊。現在、DCSオンライン他、月刊連載4本、及び、マスコミへの知見提供を実施中。起業支援、地方創生支援もライフワークとしている。

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