アパレルビジネスの「一丁目一番地」は企画力か?将来AIで対応可能になる決定的な理由

河合 拓
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一丁目一番地はビジネスモデルか企画力か

 話を「アパレル・ビジネスの一丁目一番地はどこか」という議論に戻す。ある人は「企画力」だと言い、ある人は「ビジネスモデル」だという。例えば、私は職業柄リスクマネーを扱う投資ファンドとアパレル企業の初期的強み・弱みについて討議をすることがある。投資ファンドは、まず有識者に話を聞いて「あたり」をつけ、その後、必要であれば調査を行い、投資を前に進めるということになると企業価値算定(デューディリジェンス)にプロセスを進める。

 こうした議論や調査の中で、もっとも難しいのは、そのアパレル企業が持つ「強み・競争力」といえるものが、ビジネスモデルに起因するものなのか、企画力に起因するものなのか、という論点なのだ

 なぜ難しいかといえば、ある同一購買特性を持つ母集団(クラスター)にとって、信じがたいほどの引きの強さをもつ「デザイン」や「ブランド力」の破壊力は凄まじいという事実があるからだ。そうなると、次に求められる問いは、「企画力」が当該企業の「強み・競争力」だった場合、その「企画力」はいかに生まれるのかという説明である。この説明が難しい。

一丁目一番地は企画力である

 アパレル・ビジネスの一丁目一番地、「企画力」について述べたが、私たちコンサルタントが分析結果としてなかなか言いがたいのは、「ようは、天才デザイナーがいるからこの企業は強いんですよ」という文句である。これは、まじめに企業分析をしている人に対してあまりに無責任な説明なのだ。

  しかし、現実はそうだし、そうとしか説明がつかないことが多い。

  多くの強い企業を見ていると、「組織は戦略に依存する」という有名な言葉があるように、ビジネスモデルも「強い企画力」があるから、自然発生的に形つくられる(企業文化になる)ように思う。つまり、「ビジネスモデル」と「企画力」には依存関係があり、「強い企画力」なくビジネスモデルを真似ても同じ競争力は得られないし、単に「売れない商品」を最新のデジタル技術で販売しているに過ぎないことになる。つまり、アパレル・ビジネスの一丁目一番地は「企画力」であると結論づけられるわけだ。

  しかし、それでは、その「企画力」はどこからくるのか、という話となると、なかなかそのメカニズムを解明するのは難しい。「ようは個人の力だ」と現実解とおぼしきことを言えば、「そんな危険な企業には投資はできない」、あるいは「それならば、天才デザイナーを雇えばいいのか」と言われてしまう。だから、有識者やコンサルタントは、古くはSPA(製造小売)、最近ではD2C(ディレクト・トゥ・コンシューマ)、OMO(オンラインとオフラインの融合)、などビジネスモデル論から競争力を説明するわけだ。しかし、それは因果関係が逆で、その企業の競争力の本質を語るものではない。

 

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