ユナイテッドアローズが今後も無敵であり続けるための戦略提言をしよう

河合 拓
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最も合理的に見えるユナイテッドアローズのブランド・ポートフォリオ

 そうした中、今最も売上が期待できる駅ビル・ファッションビルに数多く出店する、ユナイテッドアローズのブランド・ポートフォリオの美しさと合理性について解説したい。ユナイテッドアローズの看板ブランドは、いうまでもなく、セレクト業態である「United Arrows」であり、「BEAUTY & YOUTH」だ。私も含め、多くの人は、このブランドに憧れているが、ミドル・プレミアムであり、高級品であるUnited Arrowsの服はおいそれと買えない。

  したがって、多くの人は「United Arrowsの香り」がし、値頃感のあるPBgreen label relaxing」を買うわけだ。Green labelは、TSI holdingsNatural beauty basicJunRopeと並び、「OL御三家」と呼ばれ、ワーキングレディの定番となっている。最近は、よりファッション性を重視した、マッシュスタイルホールディングスのSnidelFRAY IDMila Owenなどをして、「コンサバすぎる」というポジションに追いやられているも、昨今、新型コロナウイルスの増加にも関わらず経済の門戸を開いた結果、ワーキングレディの外出が増えて「御三家」の売上が戻りつつあるという。

  いずれにせよ、話をユナイテッドアローズに戻せば、green label relaxingがユナイテッドアローズの収益の全てであり、green label relaxingなくして、ユナイテッドアローズは存続し得ないように思う。逆に言えば、セレクトショップ業態のUnited Arrowsは、広告塔、消費者の憧れと賭して君臨していることが大事で、ここで敢えてUnited Arrowsを利益体質にする必要はないともいえる。実際、United Arrowsのショップは日本に30店舗程度しかない。このUnited Arrowsを広告塔とした、ブランドポートフォリオ戦略は、Odette de Odile というレディースドレスシューズや、UNITED ARROWS & SONSなどにも活用されており、これらは、微妙に消費者の「所得」に応じて、展開されている。これに対し、多くのアパレルは、このようなブランド間シナジーを無視し、全てのブランドを同じ条件の損益基準で競争させ、それぞれの役割を明確にしていないことが多い。United Arrowsを頂点としたスプリンクラー効果(スプリンクラーが水を地面にまき散らすように、UAのブランド力を他のブランドに承継させている)は見事という他、表現のしようがない。

 

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