原油や肥料の高騰、ウクライナ情勢の動向をはじめ、日本の農業を取り巻く環境が大きく変化している。こうした状況のなか、国内の農業生産者団体である全国農業協同組合連合会(東京都/野口栄理事長)は、今期から新たな中期事業計画をスタートさせている。課題や重点施策などを桑田義文代表理事専務に聞いた。
発想の転換で消費拡大
──世界の食料価格高騰を踏まえ、岸田文雄首相は今年4月、食料自給率の向上、農業の国際競争力強化に意欲を示しました。そのなかで日本の農業が直面する課題についての認識を聞かせてください。
桑田 食料自給率の向上は、全農が以前から強く訴えていたテーマで、今回、国のトップリーダーに言及していただいたことは、大変ありがたいと感じています。異常気象や地球規模の人口爆発といった要因もあり、日本の食料事情は切実で、真剣に考えなければならない時期にきていると思います。
あらためて国内事情に目を向けると、食品の値上げが相次いでおり、年内に1万5000品目を超える食品の価格が改定される見通しです。全農の事業領域である農業生産の現場でも、生産資材である肥料や飼料、燃油が高騰していますが、増加したコストをうまく価格へ転嫁できていないのが現状で、ここにわれわれの課題の1つがあると認識しています。
──どのように解決しますか。
桑田 難しい問題ですが、まずは農畜産物の消費拡大を考えることが1つのアプローチになります。日本の人口が減少しているなかでは、国にとっても、また生産者にとっても最適な解ではないかと考えます。
「消費拡大」といっても簡単ではありません。発想の転換が必要です。たとえば米の場合、かつて日本では「丼めし」という言葉があるほど、ごはんはたくさん食べるものというイメージがありました。しかし高齢化が進んだ今、どれほどの人が丼でごはんを食べるでしょうか。現代にあっては、米をさまざまな形態に加工し流通させ消費するという視点を持つべきです。
──消費拡大のためには、従来の常識を変える必要があるということですね。
桑田 そうです。また近年、重要なキーワードは「健康」。農畜産物の機能性に着目、消費者に訴求しやすいよう「見える化」することも一案です。また、他企業さまと連携し、情報発信の内容を工夫しながら、需要を喚起できればと考えています。
商品をつなげて提案、好評を得る
──農産物を使った独自商品を強化しているそうですね。
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