コロナ禍の2020年8月にローンチされた「nonpi foodbox™(ノンピ フードボックス)」。全国配送が可能なフードデリバリーサービスで、オンライン飲み会の需要にフィットし、累計5000社、70万人以上に利用されてきた。外出自粛が落ち着いた今でも、業績は伸び続けているという。運営会社であるノンピ(東京都/柿沼寛之社長)の取締役副社長 上形秀一郎氏に、nonpi foodbox™誕生の経緯や現在の需要、今後の展望について聞いた。
幹事の手間を最小限にし、全国に冷蔵便で届けられる強み
nonpi foodbox™を提供するノンピは、もともと法人向けのケータリングサービスを行っており、2018年頃から金融機関やスタートアップ企業などを中心に需要が伸びていった。その背景として、ハラスメント防止のためオフィシャルな飲み会を居酒屋などでは行わず、社内で実施する動きがあったからだ。しかし、新型コロナウイルス蔓延防止の外出自粛により、売上は95%減少した。
nonpi foodbox™は、どのような経緯で生まれたのだろうか。
「食事を共にするコミュニケーションは質が高く、コロナ禍においてもなくならない需要だと考えていた。そんな折、オンライン飲み会をする人が増加したことを受け、オンライン飲み会にフィットするフードデリバリーサービスとしてnonpi foodbox™は生まれた」と、取締役副社長の上形秀一郎氏は語る。
nonpi foodbox™の強みは3点ある。1つは幹事の手間が少ないこと。幹事がサービスを申し込むと、参加者各自が入力可能なフォームが生成され、デリバリー先の住所を登録できる。費用は一括して幹事に請求するため、参加者が経費精算する必要がない。
2つめはヤマト運輸のインフラを利用しているため、全国配送が可能であること。企業がオンライン飲み会を取り入れた当初は、テイクアウトデリバリーサービスを利用することもあったが、住まいのエリアによってフードデリバリーが対応していないこともあった。その点、nonpi foodbox™はオンライン飲み会の日時より前にヤマトの冷蔵便で自宅に届くので、そのまま冷蔵庫で冷やしておけばいい。
3つめは、配送人数の上限が3万人と非常に多く、大規模イベントにも対応できることだ。nonpi foodbox™はお弁当やおせちの工場と契約し、自社で商品開発したメニューの製造を委託しているため、大量オーダーにも対応可能だ。
「追随した競合もいるが、元々飲食店からスタートしている当社は、社内にシェフもいて商品開発に強みがある。デリバリーであっても、本当においしいものを届けることにこだわった。また、オンライン飲み会は終業後すぐに始まることが多いため、レンジで温める手間すらいらない、冷蔵庫から出してすぐ食べられるメニューを考えた」(上形氏)
nonpi foodbox™は今ではGoogleやMicrosoftなどをはじめとした大手企業との取引も多い。個人情報の取り扱いなどセキュリティに関する監査でも承認を得ているという。
アフターコロナでも、増え続けているのが50名以上のオーダー
外出自粛が緩和され、飲食店に行く機会が増えた人も多いだろう。オンライン飲み会の減少と共に、nonpi foodbox™の需要も減るのではないか。
「2020~2021年ほどの高い成長率ではないものの、今も順調に注文を獲得している。その理由は、50名を超える大規模な飲み会やイベントは、今もオンラインで行われているからだ。世の中が落ち着いてきても、Beforeコロナにすべて戻るわけではなく、社会は進化している」(上形氏)
大人数のオーダーの例として、全国に支社を持つ企業が挙げられる。これまで支社間のコミュニケーションに出張費をかけてきたが、オンラインでも開催できることに気づいた企業が多いのだという。このニーズは今後も続くと、上形氏は予測している。
特に注文が多いのは、企業が懇親会の費用上限とする5,000円に近い価格帯で、参加者の平均が10名以上のオーダーとのこと。幹事からは、「nonpi foodbox™は便利で手軽でおいしい」という評価で、ほかのサービスを利用しても戻ってくることも多い。
「リピートのお客様が多いため、メニューは定期的に変え、ハロウィンやクリスマスなどの限定メニューも用意している。サービスをご利用いただいた方が、TwitterやInstagramなどのSNSで感想をのせてくれることもある」(上形氏)
また、foodbox事業を始めてみて、想定外のオーダーもあった。
「1000人、2000人規模のオーダーをいただいたことには驚いた。全国規模の会合など、以前はホテルの立食パーティーで行われていたイベントが、オンラインで行われるようになっている。オンラインでの採用面談後の会食などに利用されることもある」(上形氏)
さらに、これまで対面での飲み会に参加しにくかった人から「オンライン飲み会なら参加しやすい」という声もあがっている。例えば、子育て世代、脚が悪くて参加できなかった方、酒の席にいるのが嫌だった方などだ。
「5000社以上にご利用いただいているが、認知の獲得はまだまだこれから。さらに多くの企業に体験していただきたいと思っている。食事しながらのコミュニケーションは人間らしい幸せであり、コロナ禍でそういった場を作りたいという想いで始めたサービスだが、ビジネスとしてはこれからが正念場。オフラインを含めたさまざまな選択肢から選んでもらえる価値を、これからも提供し続けていきたい。また、日本の食は世界に通用する産業なので、グローバル展開も視野に入れていきたい」(同)