東急ストア導入のデジタルポイントカードは何がスゴイか、LINEと進めるデータ戦略

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「LINE ユーザーID」で
グループ横断で顧客を分析

 最後に、東急が最終的にねらうのは「LINEのユーザーID」を軸にしたグループ各社のデータ連携だ。「LINE」の存在について乗松氏は次のように見解を述べる。「個人の連絡先と言えば、かつては住所だった。それが、電話番号、メールアドレスに移行し、そして今は『LINEのユーザーID』がその役割を担っている」。

 つまり、「LINEのユーザーID」は、国内の大部分の消費者をカバーする、顧客を特定できるIDであり、これを共通IDに、個人の東急グループ各社の利用状況を横断的に分析して顧客理解を深め、One to Oneのアプローチに活かしていく考えだ。
3つの顧客IDを
特性に応じて使い分ける

 今回、「TOKYU POINT CARD on LINE」の導入により東急は、TOKYU POINTと、楽天ポイントを合わせて、異なる3つの顧客IDを有することになる。東急はこれをそれぞれの特性に応じて使いわけていく考えだ。
たとえばTOKYU POINT会員は、東急グループが長年にわたって関係を築いてきた層で、年齢の高い人が中心だ。それに対し、楽天とLINEは、新しい客層、とくに若年層が多い。

 また楽天IDは既存の顧客より、購買金額、利用回数ともに低い傾向があり、今後、ロイヤルカスタマーに育成できるように、顧客の理解、分析を進めていきたいとしている。

独自のスマホアプリも
板のカードもなくさない

  これらの取材を通じて、ある疑問が生じてくる。デジタル上で利用可能なポイントカード「TOKYU POINT CARD on LINE」のスタートにより、今後、板のポイントカードや、東急ストア独自のスマホアプリはどうなっていくのか、という点である。将来的にはすべてをデジタル上やLINE公式アカウントの機能として統合していくのだろうか。

 これに対して東急の答えはノーだ。旧来からのロイヤルカスタマーは、プラスチック製の板のポイントカードや、独自のスマホアプリを利用する人が中心だ。「TOKYU POINT CARD on LINE」は、あくまでさまざまな顧客層にアプローチし、利便性を提供するうえでの1つの手段だという。

 とくに独自のスマホアプリについては、多くのロイヤルカスタマーが存在するため、いっそう満足度の高いアプリに進化させていく。「TOKYU POINT CARD on LINE」を通じて得た新規ポイント会員も、ゆくゆくは独自のスマホアプリの利用に移行してもらいたい考えだ。

 乗松氏は、顧客データを活用するうえでは重要な点は、「何のために使うのか」という目的を明確にすることだと指摘する。「東急は全国展開の企業やブランドとは異なり、東急線沿線に住むお客さまの生活に利便性や価値を提供することがミッションである」と同社の目的を述べ、グループ全体で連携して価値創出のための顧客データ活用を進めていく考えだ。

東急デジタルプラットフォームマーケティンググループ・マーケティング担当主査の乗松康行氏
東急デジタルプラットフォーム・マーケティンググループ・マーケティング担当課長補佐の吉井光生氏

 

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記事執筆者

ダイヤモンド・チェーンストア編集部 / 株式会社ダイヤモンド・リテイルメディア

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