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すでに黒字でコロナ禍でも絶好調!日本版オフプライスストア、アンドブリッジ急成長の理由

まだ鮮度の高いファッション商品の余剰在庫をさまざまなメーカーからセレクトして、一つの店で販売するオフプライスストア。すでに欧米では急拡大し、強大なマーケットになっている。このオフプライスストア業態に参入し、今年4月に5店目となる新店舗を出店させたのがワールドとゴードン・ブラザーズ・ジャパンの合同会社であるアンドブリッジ(東京都/松下剛社長)。苦境のアパレル市場で、前年比205%という成長を遂げている。アンドブリッジの店舗に今多くの人が足を運ぶ理由はどこにあるのか、松下剛社長に話を聞いた。

取り扱いは700ブランド、定価の5070%オフで販売

「アンドブリッジ ニューポートひたちなか」店内

 「オフプライスストア」として注目されるアンドブリッジは、アウトレットショップでも古着ショップでもない、まったく新しい業態。シーズン遅れ品や余剰在庫を主に取り扱う店内は、さまざまなブランドを取り扱う、「価格を抑えたセレクトショップ」といえるものかもしれない。

 商品はすべて新品で、ブランドネームタグもそのまま。ウエアのみならず、バッグやシューズなどのファッション雑貨から、キッチン雑貨やインテリアまで揃える。ワールドグループのブランド以外も幅広く取り揃え、価格は、各ブランドの定価の50%から70%オフで販売される。

 安さの理由は、季節ごとにどうしても出てしまう余剰在庫を通常の卸値よりも低価格で買い取って、あるいは仕入れて販売しているから。アパレル業界全体がサステナブルな社会を目指して、需給バランスを考えた取り組みを進めているが、それでも全体の5%10%は在庫となる。その在庫をどうにかうまく活用したいとの想いから生まれたのが、アンドブリッジである。

 コンセプトは、「サステナブルな環境社会の実現のため、ファッション業界の廃棄ロス削減を目指し、価値あるブランドの余剰在庫を再編集してお手頃価格(オフプライス)で届ける」こと。アパレル大手のワールドと、動産ビジネスで16年の実績があるゴードン・ブラザーズ・ジャパンがタッグを組むことで誕生した。

 取り扱いはワールドブランドに限定しない。ゴードン・ブラザーズ・ジャパンの仕入れルートを活用し、現在75社、700ブランドを取り扱っている。全体の3~5%は海外ブランドが占め、ワールド商品は全体の20%以下だ。20226月現在、茨城県に1店舗、埼玉県に2店舗、神奈川県に2店舗の合計5店舗を構える。

余剰在庫を再編集、2カ月で売り切り「また新しいものが見つかる店」に

コストを押さえつつ、見応えのある店舗に仕上げている

 「セレクトショップのような」イメージこそが、アンドブリッジが消費者に受け入れられている最大の理由。「顧客が求める商品を『作る』ことはしていないが、各店舗ごとの顧客の声、要求に応えるような品揃えを徹底している」と松下剛社長は話す。

 店舗のロケーションごとに顧客が求めるものは違うので、そのお店を訪れる人が求める商品を調達し、カテゴリー、価格帯のランク別に再編集して販売する。カテゴリーは、メンズ、レディス、キッズ、ライフスタイルに、ランクは1万円以下の「GOOD」、2万円以下の「BETTER」、2万円以上の「BEST」に分けている。

 700ものブランドから各店舗に適切なアイテムを短いスパンで抽出していくのは大変な手間だが、この「再編集」の作業によって、結果、「アンドブリッジに行くのは楽しい。何か良いものが見つかりそう」という期待感につながっている。2カ月ですべてを売り切っていくビジネススキームを目指し、顧客には2カ月に1回「また新しいものがあるかも」と思って来店してもらうことを狙う。

 店頭には当然、最新のファッションアイテムは並ばない。例えば2年前の商品だから嫌だという声はないのだろうか。「旬の商品じゃないから買わないという考え方はないと思う。購入の決め手の一つはブランド名に魅力を感じられるケース。もう一つはブランドというより、商品そのものの価値と価格に惹かれるケースで、こちらも非常に多いと感じている」(松下社長)

 トライアルとして夏場に上質の冬物商品を販売してみたところ、「この価格でこのクオリティなら即買おう」と抵抗感なく購入する客が多かったという。

 オフプライスストアとして、再編集した商品を2カ月で売り切るという使命はある。ただ、アンドブリッジが目指すのは、「余剰在庫を抱える企業と企業を結び付けるハブ」としての役割を果たし、結果としてエンドユーザーに喜んでもらうことだ。「アンドブリッジの店舗で『このブランド、聞いたことある』と手に取って購入いただき、それをきっかけにブランドのファンになったり、これまで知らなかったブランドだが『良い商品だったからまた買いたい』と、直営ブランドにも足を運んでもらう形が理想。このような“買い回りの循環”を作りたいと思っている」(同)

さまざまな企画にチャレンジし、オフプライスストアの可能性を探る

最大店舗のひたちなかは、くつろげるベンチの設置や広い店内を活かし回遊性を高めた

 どの店舗も300坪ほどの大型店であるのもアンドブリッジの大きな特徴である。「広いスペースを活用し、家具の販売、中でもインポート家具の中古品などを販売したところ、大変好評だったという。「家具やインテリアも大きな需要があると確信した」と松下社長は語る。

 また、地元で活躍する音楽家を誘致してピアノコンサートを開催するなど、常に新たな取り組みにチャレンジし、顧客を呼び込むため、飽きさせないために工夫するのがアンドブリッジ流だ。

 アパレル業界の余剰在庫と同様、大きな社会課題となっているのが食品ロスだが、アンドブリッジでは昨年末から、社会貢献型ショッピングサイトの「KURADASHI」と新たな協業もスタートさせた。賞味期限が迫っていたり、パッケージの汚れやキズなどの要因で通常の流通ルートでの販売が困難な食品を扱う「KURADASHI」の商品を販売してみたところ、「え?食品もあるの?」と大きな反響があったという。「今後は、出店しているショッピングセンターとの合同や、店舗の立地に合わせたイベントを企画したりと、マス向けのPRと地域向けのPRを分けて展開していく」と松下社長は意気込む。

コロナ禍の停滞から脱却、今後3年間で30店舗体制を目指す

松下剛社長

 現在4期目を迎えているアンドブリッジは、前期に黒字化を達成、前年比205%と大きな成長を遂げている。2022年末までに6店舗、2023年末、2024年末までにそれぞれ10店舗の出店を目指し、今後3年間で30店舗体制とする計画だ。

 出店コストは極力抑え、商品価格を下げて顧客に還元することを念頭にした店づくりを進める。今期出店を計画しているのは、16号線の内側エリア。すでに20224月に新規オープンした川崎店の動向を検証しながら、今後は都心部への出店も前向きに検討していく。

 一方でこの先解決すべき課題は、調達だという。現在、メーカーからの調達には買取型と消化仕入れ型の2種類を設けている。買取型はメーカー側にとって一気に在庫をはけるというメリットがある。消化仕入れ型の場合、メーカー側に売れない商品が残る可能性があるが、お互いに連携しながら商品の効果的な見せ方、売り方を模索できるので、長期的な付き合いにつながるというメリットがある。

 「消化仕入れではメーカーの要望を聞きながら売り方を考えていくので、買取型に比べて時間がかかるのがネックだが、現状では信頼関係をしっかりと築きながら長く取引をしていきたいという思いが強い。とはいえ、調達をどのような形で拡大していくべきかは検討していく必要がある」(松下社長)

 アパレル業界で長年店舗運営をしてきたワールドのスキルと、動産ビジネスで長く活躍しているゴードン・ブラザーズ・ジャパン両社の挑戦は、まだ始まったばかりといえる。オフプライスストアが日本に定着し、どこまで進化するのか、今後も是非注目していきたい。