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リユース業態で快走するゲオが次に見据える、オフプライスストアの可能性と普及への難所

ゲオホールディングスはさきごろ、2022年3月期決算を発表。売上高は3347億8800万円(前期比2%増)、営業利益は81億7300万円(同89.6%増)、経常利益は96億6200万円(同101.5%増)、当期純利益は59億8500万円だった。

堅調な伸びを示す中で、柱に成長した「リユース」事業が大きく伸ばし、売上高で1684億1900万円で対前期比126%。連結の売上高で50.6%、売上総利益の構成比は、56%(前期は48.9%)となり、ついに過半数を超えた。リユース業態で快走するゲオが次に見据える成長戦略とは何だろうか?

衣料品・家電のリユース部門が業績を牽引

同社の「リユース」は大きく、ゲームなどの「メディア系」と衣料品やラグジュアリー商材などの「リユース系」の2つに分かれている。なかでも伸びているのが後者の「リユース系」。売上高で対前期比1427%となる111674800万円で数字を牽引。初の1000億円を突破(前期は782億円)した。

同社のリユース系は、業態で言うと主に、家庭用ゲーム・携帯電話・スマートフォンの買取販売、DVDレンタル等を行う店舗の「GEO」と衣料品や家電製品等の買取販売を行う「2nd STREET」で構成される(他に時計・バッグリユースのおお蔵がある。また、GEOではレンタル、新品も扱う)。

主軸は後者の2nd STREETだ。この1年で38店舗増やしたのに対し、GEO56店舗の減少となっていることからも、勢いの差は鮮明になっている。同社はさらに出店攻勢を強め、20233月期末までに800店体制を目指し、売上拡大を図る。

ゲオホールディングスの商材別売上高 22年3月期(出所:同社決算説明資料)

リユースの次の柱の育成へ

リユース市場でトップを走る同社はその体制強化と並行し、次なる一手として、新規フォーマットの拡大にも力を注ぐ。オフプライスストアのLuckRackだ。

この1年で9店舗増やし、現在、19店舗。20233月期はさらに10店舗の新規出店を計画している。同社の他業態に比べればまだまだ規模は小さいが、将来的には400店舗も視野に入れる。 

ちなみにオフプライスストアとアウトレットは、どちらもシーズンオフ品や売れ残り品を扱う。この点で境界が曖昧だが、オフプライスは専売品がなく、どちらかというと、ブランド側ではなく小売側手動で展開される業態というイメージだ。

もちろんリユース品とも違い、むしろ、リユース品を補完する役割も担える。加えて、出店戦略、仕入れや陳列、値付けや価格設定など、これまでに培ったノウハウを横展開できるため、同社の成長戦略との親和性も高い。 

オフプライスストアの可能性

同社は、このオフプライスストアを「新しい買い物のかたち」として、賢い買い物の選択肢の一つとして提案している。シナジーという意味では、同社のリユース店舗で買取をしてもらい、それを軍資金として、オフプライスストアで新品を購入するという買い物サイクルの定着も期待される。

古いものを売って、新しいものを安く購入するーー。それはまさに、循環型のサステナブルな消費スタイルそのものであり、同社が描く、「あらゆるモノの循環インフラとなる」という構想に欠かせない業態といえ、なにより昨今の社会情勢にも合致する。

 

オフプライスストア拡大への課題

現状では、日本ではオフプライスストアがうまくいっている事例は少ない。そもそも余剰在庫で、市場で支持されなかったものであり、だからこそ、品揃えが重要となるが、それも売れ行き次第のため、計画的な買取りが困難。すでに各メーカーが、自社ECなどで、流通ルートを持っていることなども要因として考えられる。

これらをクリアするには、強大な資本力に加え、陳列も含めた企画力、販売力が極めて重要になる。さらに、トレンドとは一線を画す、必要なものを安く手に入れるという、これまでに染み付いた消費者パターンを根底から変えていくことも求められるだろう。そう考えると、成功へ向けたハードルは高く、同業態の拡大が容易ではないことは自明だ。

あらゆるモノの循環インフラへ

もっとも、同社にはすでにリユースで培った豊富なノウハウがある。その意味では課題は、いかに消費者の購買パターンを変容させられるかに絞られるだろう。

簡単ではないが、社会全体が「持続可能」をキーワードに意識変革が進みつつある。着々と進むインフレ傾向も、オフプライスストアにとっては追い風だ。魅力的な価格と品揃えさえ追求できれば、十分に勝機はあるだろう。

モノを不要な場所から必要な場所へーー。祖業のレンタルビデオでは、買うから借りる。リユースでは使ったら売ると、33年の歴史を振り返れば、同社は消費スタイルの変化を機敏に察し、それにサービスを適応させながら成長と進化を遂げてきた。

製造シーンにおける循環型のシステムは各メーカーが着々と推し進めている。一方で、消費の側面ではあくまでも個々の消費者の意識次第というのが実状だ。同社が小売企業として、消費における循環型のシステムを構築し、それが機能し、定着するようになれば、こうした課題も解決される。そうなれば、大量生産大量消費に代わる新たな購買スタイルの定着も一気に加速するかもしれない。