規模は小さいが抜群の成長戦略!TOKYO BASE、アパレルの常識を覆す3つの強みとは

河合 拓
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アローズやSnidelZARAの半分しか店舗がない必然 
ブランドビジネスの本質とは

売上800億円を突破しているのではないかといわれているマッシュスタイルホールディングスの基幹ブランド「Snidel」、ユナイテッドアローズが展開する「United Arrows」の店舗は日本に約40店舗しかないという事実をご存じだろうか。ZARAの店舗が70店舗程度なので、極論をいえば人気ブランドSnidelUA (United Arrows)は、ZARAの半数強しかない。おそらく、逆のイメージをもっていた方も多いかと思うが、「ブランドビジネス」というのは希少性が重要で、百貨店アパレルのように数千店舗などというのは多すぎで、在庫効率の悪化を招くだけだ。また、相応しくない立地に出店すれば、みずからのブランドの地位を陥れることになりかねない。

出店は両刃の剣である。出せば売上は上がるが、ある臨界点を過ぎると、それ以上にコストもかかる。さらに、その売場が営業利益ベースで収益を生み出さない場合、店舗閉鎖をして縮小均衡施策に出た方が企業収益は上がることもある。したがって、マッシュスタイルホールディングスとTOKYO BASEの「むやみやたらに出店するのではなく、イメージの良さなど、店舗ロケーションがブランド価値維持に重要だ」という発言は、驚くほど両社の共通点を見いだすことになるわけだ。

売上と聞けば日本の最南端でも出店し、いざ換金となればブランド毀損より換金率を優先すればブランドは育たない。日本のブランドが海外ブランドに勝てない明確な理由はここにあり、「科学経営」の名の下にオペレーション偏重主義が破壊したものは少なくない。日本は、こうした感性的価値を最大化するための戦略より、「OMOだ、オムニチャネルだ」と「側の議論」に投資をし、ネットで自由にモノが買える今、店舗の持つ意味を定義している企業が少ないように見えるのは、あやまったキャッシュフロー経営のなれの果てが引き起こす悲劇、である。

その点、TOKYO BASEの出店は、谷正人CEO自らが説明しているように、「日本では、東京、大阪、名古屋の三大都市を中心に、そして、中国ではいたずらに二級都市*に出店しない」というのも、同社の出店戦略の一つである。
*あるいは二線都市。中国では 一級都市に分類される北京、上海、深セン、広州の四大都市から、新一級都市<あるいは1.5級都市>、二級、三級、四級都市と人口や経済により階層化している

TOKYO BASEの21年度の国内EC化率は35%(国内EC売上50.25億円、国内店舗売上高93.67億円、決算説明資料より)、マッシュスタイルホールディングスは30%*(21年度2 fashion snapより)他のアパレル企業を圧倒的に引き離している。ここからも「店舗とはかくあるべし」という明確な輪郭とブランド力の関係性について正しい理解をしているものと思われる。ついでにいえば、Snidelは、ファッションビルやショッピングセンターにもあれば百貨店にもある。今時、「百貨店アパレル」などというセグメントはないと思った方が良く、どこが最もブランド力を維持できるかという視座から店舗を選んでいることが、両社に共通のユニークネスなのである。

KPIは結果指標!目的にあるべからず

最近、「いかなるKPIが妥当か?」という質問をよく耳にする。しかし、ひそひそ話で現場や取引先の商社などに聞くと、「KPIより前に売れるものを作れ。企画力が弱すぎるし時代に合っていないんだ」という声が圧倒的なのだ。私は、コンサルタントという立場上、こうしたVOC (Voice of customer 顧客の声:企業組織内部顧客にも使う)を、最近すぐに口に出してしまい、時に経営者の反感を頂くことも増えてきたが、私の中には将来から逆算した今、クライアントが何をすべきか、というコンサルタント固有の思考である、積み上げ式でない、積み崩し式思考でものごとを考える癖がついた。そして、先日お話ししたような世界の潮流の現場に入るほど、もはや時間が無いどころかタイムアウト。奇跡を狙うのなら、今すぐ実行して欲しいという焦りもあり、少々気が短くなってきたようだ。

「服とは我々にとっていかなるものか」

ファーストリテイリングは、こうした禅問答のような質問からライフウエアという自らの立ち位置を明確化させたようだ。もちろん、世界経済の停滞や日本という国の貧困化、SDGsによる地球温暖化などベーシックで質が良くコスパが高い商品を長く着る、ということになるとユニクロ一択になるのはわかる。しかし、同時に、売上で170億円しかないTOKYO BASEがプライム市場(4月以前の一部上場企業に相当)にあり、この規模で積極果敢に海外に出ているのは、ユニクロにはないTokyo contemporary mode  とよばれる、世界で唯一のスタイル、そして、Made in Japanという(単なる日本製ありきではない)ものづくりを差別化の真ん中に置いているからだ。流石の私も、TOKYO BASEの服はモードすぎて着られないなと思っていたところ、THE TOKYO という、50歳までをターゲットにした服が出たと聞いて、早速大枚をはたいて物色しに行った。

なるほど、間違いなく差別化が難しいと言われるファッションビジネスで、このTOKYO BASEは確固たる世界観を持っており、それが海外でも高い評価をされているのだということがよくわかった。私は、今一度、日本の全てのアパレル企業に、「みなさんにとって服とは何か」という問いを投げかけ、自らのDon’t (絶対やってはならないこと)を決めてもらいたい。KPIとは、そうした市場からの引きがあってはじめてパフォーマンスを測定できるツールなのであり、私の専門であるデジタル戦略もまたしかりだ。

  1. 販管費比率が売上比で40%台に生産性向上とデジタル化を効果的に活用すること
  2. 日本だけでなく、世界からマネタイズする複数の財布を持っていること
  3. EC化率が既に30%を超え、店舗は「売場」から次のステージへ再定義されていること
である。逆に言えば、販管費が5-60%を超え、さらに原価を下げようとしている日本以外に戦いの場がないと信じている。ECはチャネルの一つだと勘違いし、結果、全社売上の15%以下になっており、売れない赤字店舗を放置し店舗効率と在庫効率をますます悪化させていることは、よほどの競争力が無い限り今の先に未来は待っていない。

 

プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。 現在は、プライベート・エクイティファンド The Longreach groupのマネジメント・アドバイザ、IFIビジネススクールの講師を務める。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
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