“第二の柱”が増収に貢献! 多角化に向かうAOKIホールディングスの針路

棚橋 慶次
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エンターテイメント事業が“第二の柱”に

 エンターテイメント事業誕生の起点は、1990年代後半にさかのぼる。当時はスーツの売上が頭打ちとなり、AOKIホールディングスは不採算店舗の整理を進めていた時期だ。

 店舗閉鎖・縮小と同時に、とくに広大なスペースを抱える郊外型店舗を中心に余剰スペースが生まれた。その有効利用対策として始めたのが複合カフェ「快活CLUB」であり、1号店が千葉県幕張にできたのが2003年のことだ。

 それから20年が経過し、エンターテインメント事業は今やAOKIホールディングスにとって「第2の柱」に育っている。いまだ紳士服チェーン店のイメージが強いAOKIホールディングスだが、収益構造は様変わりしている。

 ファッション事業がコロナ影響からの回復が見通せない中、エンターテイメント事業の売上高はすでにコロナ禍前を上回っている。19年3月期との比較で、22年3月期におけるファッション事業の売上高は同22.6%減であるのに対し、エンターテイメント事業の売上は同5.2%増となっている。売上高全体に占めるエンターテイメント事業の比率も4割近くに達している。

本業のスーツ販売、ブライダル事業がカギか

 ただ、一見順調そうに思えるエンターテイメント事業だが、増収は新店効果によるもので、既存店売上高は「快活CLUB」「コートダジュール」いずれもコロナ禍前の水準に回復していない。

 結果として収益性は悪化した。エンターテイメント事業の売上高営業利益率は、19年3月期の5.9%から22年3月期には1.0%に急降下している。もともとエンターテイメント事業は、客単価が低いうえに人手がかかるため、収益性は決して高くない。さらにここ数年で店舗の運営効率低下が追い打ちをかけ、収益性がさらに落ち込んだというわけだ。

 成長性・収益性回復のカギを握るのは、ブライダル事業の復活だ。コロナ禍前のブライダル事業の売上高営業利益率は8.5%と他事業よりも高く、さらにその以前は10%を超えていた。

 ファッション事業の核となるスーツ販売も、本来は客単価が高く稼げるビジネスのはずだ。本業のスーツビジネスへの回帰とブライダル復活こそが、AOKIホールディングスの真の業績回復につながることは言うまでもない。

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