間もなく今年も本格的な台風シーズンがやって来ます。今のうちから、台風対策に関するウェザーMD(商品政策)のポイントをまとめておきましょう。
台風シーズン到来に向けた準備事項
自店舗所在地が抱える自然災害リスクの種類と大きさを把握するため、自治体などが作成するハザードマップの確認をしておきましょう。ハザードマップでは、主に大雨による土砂災害・浸水害の発生危険度、津波・高潮による浸水危険度、火山噴火による降灰危険度を知ることができます。また、ハザードマップへの記載はありませんが、近くを走る鉄道が雨や風の影響をより受けやすい路線かどうかも把握しておく必要があります。
台風に関する統計データを確認しておきます。最新の平年値(1991年~2020年の観測データに基づき計算)によると、月別発生数が最も多いのは8月で5.7個、月別上陸数が最も多いのは9月で1.0個となっています。年間での平均上陸数は3個です。
1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 | 年間 | |
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発生数 | 0.3 | 0.3 | 0.3 | 0.6 | 1 | 1.7 | 3.7 | 5.7 | 5 | 3.4 | 2.2 | 1 | 25.1 |
上陸数 | 0.0 | 0.2 | 0.6 | 0.9 | 1.0 | 0.3 | 3.0 |
※出典:気象庁HP(https://www.data.jma.go.jp/yoho/typhoon/statistics/average/average.html)
現在、気象庁では台風の実況と5日先までの予報を発表しています。実況値は3時間ごとに、進路予報は6時間ごと(3時、9時、15時、21時)に更新されます。台風情報の予報の中での重要な着目点は、①コース、②時間(速度)、③強さです。
まず「コース」のポイントについて。台風の中心が当地の東側・西側、北側・南側を通過するかによって、想定される影響と基本的な対策も少し変わってきます。下表で確認ください。
台風との位置関係 | ポイント | MD上の注意点 |
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西側を通過 (台風の東側に位置する) |
風、雨、波、全般に被害が甚大となりやすい | あらゆる被害を想定した危機管理を |
東側を通過 (台風の西側に位置する) |
西側通過時と比べると被害の規模は小さいことが多い | 店舗運営上の通常モードへの切り替えを早めに |
北側を通過 (台風の南側に位置する) |
台風の持ち込む熱帯の空気が入り、気温が上がる | 蒸し暑い陽気で、飲料、アイスなどの需要が伸びる |
南側を通過 (台風の北側に位置する) |
北風強く、時に寒気を引き込むため、気温は下がる | 時期によってはホットメニューの展開を拡大 |
次に時間(速度)に関するポイントについて見ていきす。台風の予報というと、コースばかりに目が行きがちですが、台風がまだ離れたところに位置している段階での予報では、コースはほぼ適中しても、最接近時刻が実際とがずれることがあります。早い段階の予想では、最接近のタイミングに±1日程度の誤差を想定しておきたいところです。
強さに関するポイントについては、最接近時に予想される台風の強さによっても、対策のレベルが異なります。台風の強さは、中心付近の最大風速によって「猛烈な」「非常に強い」「強い」「―(強さに関する表現なし)」の4つのランクに分けられます。もし台風直撃の可能性があり、その時の台風の強さが「強い」以上の場合は、当日休業を積極的に検討すべきでしょう。状況によっては「―(強さに関する表現なし)」の予想の場合でも休業を検討すべきですが、一方で影響被害がかなり小さく、ほぼ通常営業できる場合もあります。
台風接近に向けたチェック項目
台風の進路予想で、予報円が当地にかかり始める、おおむね最接近5日前からの、チェック項目を時系列的にまとめます。
時系列 | MDのポイント |
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4~5日前 | 台風進路を確認し、直撃(どれだけ接近)する可能性があるがどうかを見極め、台風対策の準備を始めます。最接近時の台風の規模によっては、店舗休業の検討も行います。 交通機関の乱れを想定し、納品予定日が台風最接近日と重なる商品をなるべく減らし、納品日を前後にずらすよう調整します。 |
3日前 | 「台風接近中」のPOP掲示を開始し、対策商品の訴求を強化します。その場合、日用品の耐久財(カセットコンロ、ガスボンベ)および使用頻度の高い消耗財の需要増にまずは優先的に対応します。 |
2日前 | 日配品、備蓄可能なグロサリー商品(飲料、缶詰、レトルト食品など)の売場強化。 |
1日前 | もし台風接近当日の休業を決めた場合は、総菜や賞味期限の短い商品の売り切りを行い、ロスを最小限にしましょう。また、あまり調理に時間がかからず食べられる簡便惣菜や冷凍惣菜、和日配などを積極的に展開しましょう。さらに、「明日の分の買物を今日のうちに」と、店内放送で購買を促すのも有効です。 |
当日 | お客様、従業員の安全確保を最優先にしつつ、交通機関の運行状況や周辺での被害発生状況を確認しながら営業しましょう。風が非常に強い場合は、一部の窓ガラス用のシャッターを下ろし、自動ドアを手動に切り替えるなどの対応も必要となります。 |
翌日 | 大きな被害が発生しなかった場合は、ご褒美需要が高まります。非日常を乗り切った自分やペットたちへのご褒美として、通常より少し価格帯が上のペットフードや高級志向のビール類、その他嗜好品売り場を強化しましょう。 被害が発生した場合は、清掃用品、衛生用品、ゴミ袋など、復旧用の商品の売場を店舗入り口付近に移動させましょう。食料品に関しては、調理(加熱含む)を必要としないおにぎり、惣菜パン・菓子パン、寿司、ペットボトル飲料(ミネラルウォーター、お茶系飲料)、カットフルーツなどを優先的に展開しましょう。台風のコース次第では、気温傾向が大きく変化するので、その陽気に対応した売場づくりを心がけましょう。 |
翌々日以降 | 復旧状況により、お客様のニーズも変化します。当初は簡単な調理でできるレトルト食品や食パンなどから需要が回復し、徐々に需要の幅が拡大します。ほぼ復旧すれば、生鮮品を中心とした通常の購買動向に戻ることでしょう。 |
万が一、台風が当初予想されたコースと違い、結果的に当地がほとんど台風の影響を受けなかった場合、大規模なロスにつながるのではないか、心配になると思います。確かに需要の規模は当初想定より縮小するかもしれません。ただ、関東以西での大雪予報の際と同様、お客さまは早い段階からマスコミ報道を受けて台風対策を行うため、準備のための需要の高まりは起こります。廃棄ロスは気になりますが、それ以上に大規模な機会ロスを発生させないようにしたいものです。