ユニクロ独走の秘密は販管費にあるのに、原価削減を繰り返すアパレルの実態とは

河合 拓
Pocket

グローバルと伍する販管費構造とは

図表3 グローバル企業と同水準の販管費構造を持つ企業の販管費内訳
図表3 グローバル企業と同水準の販管費構造を持つ企業の販管費内訳

この企業は有価証券報告書に、主立った費目しか載せていない。最も高い項目は地代家賃だが、11.6%と極めて低い。だが注目したいのが7.5%を占める「販売手数料」。おそらくこれは第三者ECに対する支払いと思われるため、実質的にはこの二つを足して19.1%と、約20%がECモールとリアル店舗に関する地代家賃ということになる。

この企業は、EC比率が全社で40%と極めて高い。リアル店舗の限界を分かっているからだ。また、人件費が極めて低いことに注目してもらいたい。役員報酬で0.5%、従業員給与は賞与と合わせて0.5%。つまり、役員報酬と従業員手当が同じなのだ。これは、単に従業員の給与が高いのでなく、無駄な人材、とくに給与が高く、デジタルに疎く、まともな戦略さえ描けないバブル世代管理職が少ないということだろう。企業は、足し算は得意だが引き算は苦手、つまり、一度ついたお腹の脂を落とすのは至難の業なのである。

このように見れば、今、日本のアパレル企業がすべきことは数値から明らかだ。公開されている企業の情報だけでもこれだけのことがわかる。仕入先いじめで原価低減に血眼になるなら真犯人を見つけることだ。世の中の変化のドライバーは、SDGs、DX、COVID-19、クロスボーダーの4つである。

余談ながら、中国の越境D2C であるShein(シーイン)のEBITDAをラフに計算すれば、15%以上になり、私がその計算根拠を欧米講演で世界のアナリストを集めたカンファレンスで説明し彼らの度肝を抜かしたことを付け加えておきたい。ここまで世界と日本は引き離されているのだ。

そして、貴方たちが5年後に戦うのは、まさに今Z世代でシーインを買っている世代なのだ。私は、ビジネススクールの講義の前に「シーインを知っている人、手を上げて」というと、若い世代は、ほぼ100%手を上げ、おじさん達は目をキョロキョロしている滑稽な姿(恐ろしい未来)が見えてくる。臭いものに蓋をし、バラ色の未来を描くのも結構だ。恐怖を煽っているという私に対する批判も知っている。しかし、私は、こうした客観的根拠を元に将来を分析し、正しいことをいうことで未来に備えてもらいたいという思いから様々な提言をしていることを知ってもらいたい。

 

すでに、11名の定員を超えました。商社、アパレル、工場、AIスタートアップなど、私が狙った方達であつまりました。あと、一席残っています。お早めにお申し込みください。完全匿名で討議の時間をメインにし、私が3回、世界のビジネスの潮流と勝つための戦略を語ります。(今後、ごく一部を除き無料セミナーに河合は出演しません)

お申し込みは下記まで

***************************************************************************

「DXとD2CによるESG経営」研究会
応募/お問い合わせ先: Info@ifi.or.jp

TEL:03-5610-5701  担当:碓井

 

3刷突破!河合拓氏の書籍

「生き残るアパレル 死ぬアパレル」好評発売中!

アパレル、小売、企業再建に携わる人の新しい教科書!購入は下記リンクから。

プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。 現在は、プライベート・エクイティファンド The Longreach groupのマネジメント・アドバイザ、IFIビジネススクールの講師を務める。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

1 2 3

関連記事ランキング

関連キーワードの記事を探す

© 2024 by Diamond Retail Media

興味のあるジャンルや業態を選択いただければ
DCSオンライントップページにおすすめの記事が表示されます。

ジャンル
業態