コロナ禍2年目でも過去最高売上の沖縄「サンエー」、「共存と競合」の成長戦略とは

棚橋 慶次
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「共存と競合」によって成長してきたサンエー

 1位サンエー(小売業)、2位徳洲会(病院)、3位沖縄電力(エネルギー)…沖縄企業の売上高ランキングは、ベスト8まですべて非製造業が並ぶ。もともと製造業の基盤の弱い沖縄は、観光産業に大きく依存してきた。

 国内外からの観光人気や移住人気に伴う人口流入もあり、沖縄県の小売販売額は復興後の50年で5倍にまで拡大した。本土が3倍だったことを考えると、急成長ぶりがわかる。

 パイが大きく膨らんでいただけに、地元小売企業の経営環境も比較的恵まれていた。本土から進出してくる大手流通チャネルの多くは、地元企業との連携の道を選んだ。長いこと米軍統治下で本土と隔離され、生活習慣・食文化・商慣行も異なる沖縄で成功するには地域密着が欠かせず、結果的に地元企業のノウハウとネットワークに頼らざるを得ない。

 コンビニエンスストアを例にとると、セブン-イレブン・ジャパン(東京都/永松文彦社長)は県内で建設・スーパーを営む金秀グループと2019年にフランチャイズ契約を締結する。ファミリーマート(東京都/細見研介社長)も、返還前の琉球貿易で財を成し現在はデパートや不動産業を営むリウボウグループと合弁を組んだ。

 残るローソン(東京都/竹増貞信社長)は当初単独での進出を試みるも、結局はサンエーと合弁企業を立ち上げた。単独時代は、用地を確保しようにも「内地の会社に土地は貸さない」地主も少なくなく、苦労が絶えなかったようだ。

 コンビニだけではない。サンエーは家電量販店「エディオン」、「無印良品」、大手ドラッグストアの「マツモトキヨシ」、九州を拠点とするレストランチェーン「ジョイフル」などとフランチャイズ契約を結んでおり、「パルコ」とは共同出資会社パルコシティを立ち上げた。

 一方でサンエーは、いち早く郊外に大型スーパーをオープンさせるなど、本土の大手資本に対抗してきた。「共存と競合」の両輪で走ってきたからこそ、創業1950年の雑貨屋が店舗網70店の県内トップ企業にまで成長できたのだ。

苦境脱出のカギは「モノづくり」にあり?

 そして現在、右肩上がりの経営環境は大きく変わった。コロナ禍が襲いかかり、インバウンドは消滅、国内外からの観光客も激減した。観光を背景に成長してきた沖縄の小売、サービス業は大打撃を受けた。もちろんサンエーにも影響はおよび、閉店を決めたテナントも出始めた。

 苦境脱出のカギを握る1つが、モノづくり強化だ。沖縄における製造業の貧弱さは特産品にまでおよび、沖縄名物の「紅芋タルト」でさえ県外に生産を委託しているというケースもある。

 サンエーは、今まで地元密着の商品で人気を集めてきた。現地生産を促せばこれまでの強みを生かしつつ、生産者利益を沖縄に落とすことができる。アフターコロナを見据えるうえでのヒントになり得るとされている。

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