ヤオコーの新フォーマット「フーコット」の2号店としてオープンした昭島店。業界全体が注目するディスカウント型スーパーマーケット(SM)だけに、オープン後から連日多くのお客で賑わっている。滑り出しは順調のようだが、フーコットの強みと、継続的な成長のためにクリアすべき課題とはどのようなものか。SMの経営コンサルティングで実績多数のアイダスグループ鈴木國朗氏が解説する。※調査日2022年3月28日、文中の価格はすべて税抜き
地域住民の定着スピードは速い
フーコットの公式サイトを見ると、トップページに「フーコットは圧倒的な安さと鮮度、品揃えで満足できるスーパーマーケットです」というメッセージが大きく掲げられている。価格と品質と品揃えのバランスをどう取っているのか、屋号の由来である「FoodCost Performance Market」をいかに体現しているのか。さらに言えば、“ヤオコーのDNA”を持ったディスカウントSMとはどのようなものなのか。大きな期待と学習意欲を抱きながら昭島店を訪れた。
調査を行ったのは、オープンから約2週間が経過した平日の午前中。1号店の飯能店と同じように、開業から間もないタイミングにもかかわらず、店舗前の平面駐車場はほぼ満車の状態で、多くのお客で賑わっていた。
一般客にとっては「突然オープンした聞いたことのないブランドの店舗」であるはずだが、地域への定着スピードは想像以上に速い。それには次のような理由があると考える。まずは、いや応なしに目に入る店舗規模の大きさと、「Foocot」のロゴをはじめとするどこかアメリカのリージョナルSMを彷彿とさせる洗練された店舗デザインである。そして、DS然としたある種の殺伐とした雰囲気とは無縁であるがゆえに、幅広い客層が足を向けやすいということも考えられる。トライアル利用のハードルが低いのだ。
そしてSNSを介してリアルな口コミが拡散されており、そうした“生の情報”が集客につながっていると言える。さらにはチラシに「フーコットはヤオコーのグループ企業です」との記載があり、その事実がフーコットへの信頼度を高めている側面もあるかもしれない。
徹底したローコスト運営
さて店内に入ってすぐに感じたのは、ヤオコー傘下のエイヴイらしい雰囲気である。生鮮3品は一時ストック場所を除きバックヤードがなく、すべての商品がセンター供給で原則として売り切り販売、フェース管理や品出しの頻度、POPの数は最低限などエイヴイ流のローコスト志向が全部門で徹底されている。シンプルに表現すれば、「とにかく生産性を高めることで、安さと収益性を向上させる」フォーマットをめざしているのだ。
そもそも、ディスカウントSMを確立するうえでは、損益分岐点を引き下げることが何よりも重要である。そのためにはイニシャルコストと開業後のランニングコストをいかに抑えるかがカギになる。フーコットがどのようにこれを実現しているかを整理してみよう。
【イニシャルコスト】
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