マンション共有部で冷凍パン販売 Store600 BAKERYと超小商圏の可能性

榎森 潤二
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コロナ禍で生まれた、より「自宅から近い場所で」かつ「ちょっと良いものを食べたい」というニーズをうまく捉えたユニークなサービスがある。マンションの共用部に冷凍筐体を設置し、冷凍パンを無人販売する「Store600 BAKERY」だ。利用者の約9割に「一度利用したら手放せない」と言わしめるその魅力は何か。前身サービスである「Store600」の概要とともに、開発経緯やマイクロマーケットの秘める可能性について、サービスを提供する「600」社(東京都)の久保渓社長に話を聞いた。

マンション共有部で無人販売

 Store600は、主にマンションの共有部(ロビー、キッズスペース、コワーキングスペースなど)に幅50cm×奥行50cm×高さ150cmの常温筐体を設置、専用アプリを介したクレジットカード決済で中の品物を購入することができる無人販売システムだ。マンション居住者にとっての共用部での体験価値向上をめざし、デベロッパーの日鉄興和不動産(東京都)と共に開発を進めてきた。

 特徴は、商品内容が固定されておらず、設置場所のニーズに合わせて自由に変えられることだ。たとえば、ロビーなら併設されているコーヒーメーカー用のカプセル、キッズスペースなら玩具、コワーキングスペースならコピー機の使用カードなど幅の広い使い方ができる。

 常温保存可能なものに限るが、もちろん食品も販売可能だ。とくに、コロナ禍で遠出やショッピング目的の外出のハードルが上がったためか、通常であれば百貨店などで購入するような「ちょっと良いもの」が売れる傾向にあるという。

 現在の主な設置対象は、首都圏の戸数100戸以上の分譲マンションで、新築の際に合わせて設置するケースが多い。初期費用(筐体費、使用説明会などのオンボーディング費用)は50万円、月額管理費は5万円が目安だ。

 サービスを提供する「600」社は2017年創業。当初は、オフィス向けミニ無人コンビニから事業をスタートした。「600」社のサービスに共通するのは「徒歩1分・半径50m商圏のビジネス」だ。極小商圏向けに事業を展開しようという発想のきっかけになったのは、意外にも社長自身が経験した都内のコンビニの昼食時の混雑ぶりだったという。「そう特別なものを買うわけでもないのに、この混雑はいただけない、と感じた」(久保氏)。だったら、店がオフィスや自宅マンションなど、近くに来ればよい。これが「600」社のサービスすべてに共通する基本になっている。

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