「そごう・西武」のゆくえとファンド による企業買収のロジックとは
5000億円規模の価値を、どこに見出しているのか?
さて、そごう・西武の話に戻す。各種報道によると、セブン&アイ・ホールディングスは、2005年のそごう・西武買収(当時の社名はミレニアムリテイリング)に使った金が約2000億円と同程度の金額で引受先を探しているという。
以前、私は企業買収を「現金製造機」に例えて解説した。1年間に1万円の現金を生み出す「現金製造機」があり、5年間は壊れずに使えるとしよう(その後は壊れるかもしれない)。つまり5年間で総額5万円が得られるわけだが、毎年得られる「1万円」を現在価値に割り引いた金額の総額が現金製造機の現在価値となる。このように現在の企業価値を算定するのが企業価値算定である。
このそごう・西武は21年2月期業績で、売上高が4300億円で、当期純損失が▲172億円。営業利益が▲
一時入札には外資ファンドが残り、5月に売却先を決定
昨年、米国大手投資銀行が、日本の不動産を狙った「日本ファンド」を次々と作ったことは記憶に新しい。このディールは2022年2月に一時入札が終わり、東洋経済オンラインの報道によれば残ったのは、ゴールドマン・サックスなど投資銀行や、投資ファンドなど4社。二次入札に進み、5月の株主総会で売却先が決まるようだ。
再建屋の私は、いつもこの段階で声がかかる。「この会社はどうすれば再建できるのか?」「この会社の強みはなにか?」「いくら儲かるのか?」などだ。
しかし、こうした依頼が、私を含めた再建屋にこないこともある。それは、そもそも事業再生を目的とせず、荒療治で儲ける手法をとる場合だ。
日本のアパレルは、欧米の竹を割ったような綺麗で単純なロジックを理解していない。彼らは「赤字事業はやめろ」「この事業が儲かっているからこれに集中しろ」「金は、赤字会社を売った金で補填しろ」という、中学生でもわかる論理で攻めてくる。これに対して日本の旧態依然とした会社ができる一般的な反応とすれば、「ドラスティックすぎる。我が社の文化に合わない」だ。しかし、合うも合わないも金が尽きて破綻するのだから仕方ない。金が山のようにあって、非上場オーナー企業なら、煮るなり焼くなり好きにすればよいが、そうでないから投資銀行やファンドに売却されるのだ。
私は数多くの投資銀行やファンドの人達と関わってきたが、彼らとて他人から預かったお金を運用して運用益を出さねばならない。人様の金をいい加減な投資に使うわけにはいかない。だから、彼らは「確実に儲かるものにしか投資はしない」。レナウンが破綻したとき、引受先が一社も表れなかったのが良い例だ。無価値なものには手を出さないのが投資銀行、投資ファンドである。
それでは、そごう・西武が持つ5000億円の価値とは何か。それは、日本の一等地にある不動産価値だろうと私は思っている。今、日本の特に都心部は不動産バブルになっており、高価なタワマンの最上階を外国人がどんどん買っている。日本の一等地にある不動産は、百貨店事業をやめれば、もっと儲かる事業が山のようにあると考えているようだ。つまり、
それが、金融の論理というものである。
2022年、借金と在庫まみれになった日本のアパレル産業は、「資本主義の論理」を目の当たりにすることになるだろう。私は、こうした恐怖を煽っているのではない。むしろ、可能な限り私にできることをやり、事業価値を上げる(敵対的買収を避けるためには事業価値を上げることだ)お手伝いをしたいと思っている。今、アパレル企業の経営層、管理職に必要なことは、世界の潮流を正しく掴み、M&A、オフショア、DXの3つを、自らがゼロから学ぶことだ。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
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