「いいちこ」誕生秘話にみるチャレンジ精神とブランド形成の重要性
テレビCMでブランド力を高める
もうひとつ、力を込めたのは広告宣伝活動である。テレビCM開始は1986年から。今年1月に亡くなった西太一郎(相談役)氏が焼酎のイメージ向上にと、アートディレクターの河北秀也氏を起用したことが見事に功を奏した。河北氏は現在の商品ロゴをつくりマーケティング活動を本格化させるとともに、CMソングには友人であるビリーバンバンの楽曲を採用。1987年の『時は今、君の中』以降、ビリーバンバンとメンバーである菅原進さんの楽曲を一貫して使ってきた。
2009年発売の「いいちこ日田全麹」のCMでは、ビリーバンバンの『また君に恋してる』を演歌歌手の坂本冬美さんがカバーしたものを使用。映像には、俳優の的場浩司さんが扮する武士風の人物が登場し大評判となった。その後も、ビリーバンバンは「いいちこ」のCMソングを歌い続け、36年間の長期にわたって両者の関係は続いている。
“清酒醸造南限の地”でブランド力もない零細企業が、生き残るために3社で合併し、和をなし、地場産品を活かして麦を焼酎に加工し、新しいマーケットを創造し、日本一の焼酎メーカーをめざす――。
市場の変化に果敢にチャレンジし、ブランドを形成し積極的に営業展開をすれば、どんな地域に本社があっても日本屈指の会社を創ることができるという格好のケーススタディだ。
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