#19 リアル店舗がECやSNS上の「デジタルシェルフ」を無視できない理由

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
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基本的な戦略は「チャネルの全張り」

 これまでは、大手量販店や専門店の棚をいかに押さえるかという競争が繰り広げられていました。当時の競争は非常にシンプルで、広告宣伝料と営業マンの人数によって決まる勝負でした。そのため、基本的には資本力があれば勝つことができました。しかも棚面積が物理的に限られているため有限性が高く、一等地に置ける商品数が限られているため、新規でこの勝負に割り込むことは非常に難しいものでした。

 一方、デジタルシェルフでは、棚が無限とまではいかないものの一気に広がり多岐に渡っています。このように、競争の原理自体が大きく変わりつつあることを、まずはしっかり理解しておく必要があります。

 そんな「デジタルシェルフ時代」の棚取り戦略は、基本的に楽天市場、アマゾン、TikTokのようなSNSなど「チャネルの全張り」が必要です。当然、金銭的コストもそうですが、オペレーションコストもかかるため、従来の縦割り型組織ではなく、新しい時代にフィットした体制も必要です。

 また、どうしても多くの商品が乱立するプラットフォーム上での戦いであるため、原則的に一人勝ちができず、分散化される傾向にあります。デジタルは棚数に上限がないため、潤沢な資金があってもそのすべてを押さえることができないのです。さらにECモールやSNSの特性上、先行者有利なロジックが働きやすいため、デジタルの世界では大手であってもなかなか勝つことが難しいのです。

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記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

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