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PB売上高の約4割超! 生協に学ぶ「エシカル消費」対応の進め方

 人や環境、社会に配慮した「エシカル消費」や“持続可能”を表す「サステナブル」への関心が高まり、これらに対応することが企業の社会的責任として求められるようになっている。そうしたなか、プライベートブランド(PB)商品売上高のうち「エシカル消費」対応商品が4割超という驚きの数字を出しているのが、日本生活協同組合連合会(東京都:以下、日本生協連)だ。そんな日本生協連の先進的な取り組みから、エシカル消費対応のヒントを提示する。

エシカル消費対応商品の
売上高は2000億円規模に!

 「エシカル(倫理的)商品の普及で持続可能な社会づくりへ――」。地球環境や格差社会、貧困などの社会問題に対し、日本生協連では、PB「コープ商品」でエシカル(倫理的)消費対応を重点に商品政策を進めている。

 2020年度のコープ商品供給高(売上高)は4397億円(前年度比112.1%)。このうち、エシカル消費対応商品は2000億円と4 割を超え、この3年で倍増した。取引先や組合員、さらにはNGO(非政府組織)や行政との連携も強化し、社会全体の取り組みとして広げていく方針だ。

すでに品目数は約100に!
PB「コープサステナブル」

「コープサステナブル」シリーズは、「海の資源を守る」「森の資源を守る」「オーガニック」の3つのテーマで商品を開発しており、その数は2021年度末時点で約100品目に及ぶ。

 なぜ、コープ商品ではエシカル消費に対応した商品の開発を一気に推進できているのか。

 まず、中長期的目標を立てて、エシカル対応を推進していることが挙げられる。具体的には、「生協の2030環境・サステナビリティ政策」「責任ある調達基本方針」「コープ商品の2030年目標」 の大きく3つの環境方針を掲げている。

 次に、これらの方針に基づき、エシカル消費に対応したPB商品ブランドシリーズを立ち上げていることが挙げられる。

 その第1弾として2021年2月に発売したのが、「コープサステナブル」シリーズだ。環境や社会に配慮した主原料を使った商品シリーズで、パッケージに共通のロゴマークをつけて販売している。

 同シリーズでは、複数の切り口を用意し、エシカル消費対応商品を広げている。「海の資源を守る」「森の資源を守る」「オーガニック」の3つのテーマで商品を開発しており、その数は2021年度末時点で約100品目に及ぶ。

再生・植物由来プラの
使用商品を年間で400品増へ

 これまで生協のエシカル消費対応商品は、食品分野が中心だった。これを22年度からは、家庭用品の分野にも本格的な展開を進める計画だ。たとえば、トイレットペーパーやティッシュなどについては、再生紙やFSC認証紙を使用した「森の資源を守る」商品への移行を進める。

 商品の容器包装を、環境配慮型に変える施策も、明確な目標を立てて実行中だ。「使用プラスチック重量の削減」と、「30年までに再生プラと植物由来プラの使用重量合計割合を50%にする」目標を掲げ、これを実現するべく、再生・植物由来プラ使用商品を年間で400品増加させるチャレンジを最優先課題としている。

 21年度中に、包材・パッケージにプラを使用している約4700品のうち、514品を再生・植物由来プラ使用商に切り替える。今後も「コープサステナブル」を中心にプラ削減と再生プラ使用を進めていく考えだ。

エシカル消費対応商品の中でも供給高上位の「骨取り魚」シリーズ。外袋の一部には植物由来のプラスチックを使用している

一筋縄ではいなかい
商品開発のリアル

 こうした環境対応商品の開発には、組合員のニーズの把握や取引先などステークホルダーとの連携が不可欠だ。日本生協連ブランド戦略本部の朝比奈まゆ子本部長は「日本生協連の独りよがりで進めていくことはせず、組合員、取引先、会員生協とともに丁寧に商品開発を進めていく」という。

 現在のようにプラスチック使用商品が増えた背景には、容器や包装に使用することで、便利で持ち運びができる、品質保持に適しているなどの背景がある。朝比奈本部長は「プラ削減を目標に、できることから始めているが、段階を踏まないと進まない部分もある」とエシカル消費対応商品の開発における難しさを述べている。

 たとえば、包装のプラ削減で包材を1センチ小さくしようとすると、工場でシールを貼るラインを組み立て直し、テストを繰り返す必要がある。包装を小さくしたがために、途中で機械に挟まって商品がラインに流れなかったり、品質が保てなかったりして、結局、テスト段階で元の袋に戻す。こういった試行錯誤がたくさんあるのだ。

 また、ペットボトルなどの容器でのプラ使用重量を減らすと強度が弱くなる。そのため配送段階の品質維持対策としてダンボールを厚くして、九州から北海道と全国規模で輸送テストを繰り返して検証する。さらに取引先としてもコストアップになるほか、歩留まりも悪くなってしまう。このように包材削減1つとってもハードルがいくつもあるのだ。

「関心はある」が
価格や利便性への不満も

 21年9月に発表された日本生協連の「エシカル消費に関する意識調査」の結果では、回答した組合員の約6割が「エシカル消費に関心がある」と答えた。一方で、価格・経済的負担から「エシカル消費をできない・しづらい」という回答も6割に上った。

 組合員としても、「これまで、トレーごとレンジで調理できたのが、トレーをなくした場合、一度お皿に移さないと調理できない」「再生・植物由来プラへの切り替えを単品レベルで進めていくと価格が上がってしまう」など、環境政策は賛成だが現実問題として賛成できないといった声もなかにはあるのだ。

組合員、取引先の
“本音”と向き合う

日本生協連は、取引先や会員生協・組合員と意見交換を図り、“本音”に向き合いながら商品開発を進める

 このように、エシカル消費対応商品を進めるにあたって、さまざまなハードルや、組合員からの声がある。そうしたなか日本生協連では「ステークホルダーの“本音”に向き合いながら進めていくことが大切」(朝比奈本部長)とし、30年に向けてプラスチック問題の対応にどのような道筋を立てるのか、取引先や会員生協・組合員と意見交換を図り、目線を合わせて進めている。

 なお、昨年10月の第3回「ジャパン・サステナブルシーフード・アワード」において、「『コープ サステナブル』“森の資源を守る”シリーズ発売、および『責任ある調達』への取り組み」が、持続可能な水産物の普及への貢献としてリーダーシップ部門のチャンピオンに選ばれた。

 「コープサステナブル」が特別なシリーズではなく、組合員や社会に支持されコープ商品のスタンダードになっていく。そのことが持続可能な社会づくりにつながる。