アークスのSDGs経営、東証プライム企業にSDGs経営は必須!?

渡辺林治
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4月4日に東京証券取引所の上場区分が再編され、海外投資家を意識した「プライム」、標準的な「スタンダード」、そして成長企業の「グロース」に各社は分類されました。小売業でも最上位のプライムになった企業には今後、SDGs経営が必須になりそうです。

日本最大のスーパーマーケットの展示会であるスーパーマーケット・トレードショー2022では、アークス(北海道)、アクシアル リテイリング(新潟県)、そしてイトーヨーカ堂(東京都)など小売各社の協力を得て、「スーパーマーケットのSDGs経営と実践」についてオンラインセミナーを開催しました。アクセス数が最も多いイベントとなり、SDGs経営への関心の高さが窺えました。

そこで今回は、前回に引き続き、アークスのSDGs戦略を取り上げます。具体的には、事業会社であるラルズ(北海道)を事例に紹介しながら、SDGs視点がアークスグループ、そしてラルズの商品戦略と店舗戦略にどう具体化され、企業の発展に結び付いているかを見たいと思います。

アークスのラルズマート啓明店(札幌市内)

 商品戦略とSDGs

 まず、ラルズの商品戦略の方針は、生鮮食品は「味」「鮮度」「価格」の順で重要であること、売場づくりは商品部が主導であるものの、2割程度は店長自らが地域の顧客と商圏を見て個店対応することです。

 この方針の下、SDGs視点でアークスは次の2つに取り組んでいます。第1は、安定した低価格と供給で消費者を支えることです。ラルズでは、「生活防衛価」として買いやすい価格で、欠品なしで販売し続けることをめざしています。お客さまが安心して快適に買物ができるように、いつ来店されても、同じ商品は同じ価格で提供しています。店舗の規模と取り扱う商品数によりますが、2020年は最大で1店舗当たり2000品目の商品を「生活防衛価」に設定しました。21年にはこれを最大3000品目まで増やしています。

 第2は地元農家との連動とフェアトレード強化です。ラルズでは、札幌近郊の契約農家で朝に収穫された野菜を「大地の直送便」として販売しています。生産者の名前と産地が分かるシールを商品に貼付し、地元生産者と地元住民のつながりを大切にしています。東光ストアとラルズでは、フェアトレード商品も扱っています。品揃えの中に社会性を意識した商品を増やし、顧客に自社が国際協力に取り組んでいることを理解してもらえる機会を増やしています。

店舗戦略とSDGs

 次にアークスの店舗戦略です。第1に店舗はSDGsの現場と考えられ、アークスは地域社会におけるライフラインとしての役割を継続して果たせるように取り組んでいます。これはSDGsにおける11「住み続けられるまちづくりを」、2「飢餓をゼロに」、3「すべての人に健康と福祉を」などの実現につながりますが 、こうしたSDGsの目標が設定される以前からの取り組みです。つまりSDGsにかかわらず、アークスにとっては店舗を通じて高い社会性の実現に向けて存在していることがわかります。

 第2に店舗の維持力は従業員の教育と働き甲斐がポイントです。SDGsの視点で考えると、4「質の高い教育をみんなに」と8「働きがいも経済成長も」は、店舗が地域社会に適切な役割を発揮する主人公である従業員に関係している目標です。従業員のやる気と技術を上げるため、人を育てるために、アークスでは教育と訓練を続けています。

 従業員の働き甲斐を高め、働きやすい環境をつくるために、ラルズでは1~2分程度のスタンディングミーティングを数多く行うなど、こまめに従業員の話を聞く機会をつくっています。スタッフの雇用契約更新時の店長との面談では、契約内容の確認だけでなく現状や悩みなどを聞いています。モチベーションアップには、給与だけでなく、自分が会社や地域のために役立っている、自分のやったことが評価されていると実感できることが必要と考えられています。雇用の機会を与えればそれでよいというのは昔の話で、各々の事情に配慮し、頑張ってもらえる環境を整えられていることが鍵であることが読み取れます。

アークスの事例から読み取れること

 前回と今回にわたって、アークスのSDGs経営を取り上げました。アークスの事例からは、スーパーマーケットの経営にとって2つの結論が導かれます。

 第1にスーパーマーケットの経営はSDGsそのものであるということです。経営目的でもあるライフラインとしての社会的役割を発揮し続けることなど、SDGsに含まれる内容の多くはすでに経営の中で取り組まれていました。地域社会との良好な信頼関係なくして、スーパーマーケットは運営できません。そして従業員が自主的に動き、高いモラールを維持し、能力を発揮できなくてはなりません。こうした小売経営の本質を踏まえ取り組んできたことが、アークスの長期・超長期の維持発展につながっていると考えられます。

 第2はSDGs経営が仲間を引きつけるということです。アークス発展の背景にはM&A(企業の合併・買収)の成功があります。この成功は、マネジメント・チームによる理念共有、グループ会社ごとの取り組み、そして現場での店舗と商品への具体化に支えられています。たとえば、ユニバース(青森県)のように環境経営に熱心で実績のある会社がグループ入りしたことで、グループ内で経験と知識が共有され、グループ全体の社会性向上にもつながっています。SDGs経営は事業拡大につながる好循環をもたらしているようです。

 以上をまとめると、SDGs経営はアークスの長期的な発展につながっていることがわかります。

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