外食チェーン生き残りの形か! すかいらーくHDがDX推進によって見出す勝機とは

油浅 健一
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お得メニューの拡充で利用機会を創出

 DX推進と並行し売上アップ施策も補強する。そのための施策のひとつとして同社は、従来の外食習慣が減少傾向にある中で、顧客ニーズに最適な品揃えと価格戦略を重点的に実行するメニュー戦略をあげている。

 たとえばガストでは、値ごろ感のある商品アイテム数を拡充し、注文点数を増やすことで客単価の向上と客数増を目指す。和食業態の夢庵、藍屋では、日常使いしやすい手頃な価格のうどん・そばのラインナップ拡充と旬の素材を強化する。バーミヤンは、500-600円台の麺・飯メニューと、ティータイムに飲茶メニューを投入し、新たな利用動機の創出を図る。また、外食自粛によって中食が強力な競合となった。その結果、特にランチの価格帯が低下したことに対応し、従来の価格設定より値ごろな商品アイテムの拡充に注力。「お得ランチ」の提供で、まずは店舗の利用頻度を高めてもらうことに力を注ぐ。

 コロナ禍で順調に拡大したデリバリー・テイクアウトもさらなる強化を図る。同社は自社で宅配リソースを保有しており、軌道に乗れば新たな収益源となり得るポテンシャルがあるだけに、競争が激化しているものの攻めの姿勢は崩さない。

 通販事業も順調に成長しており、楽天・アマゾンでは自社ブランドが人気商品に育っている。商品ラインアップも4品から16品まで拡充しており、21年12月には前年同期比で3.6倍の売上を達成するなど、通販市場でも同社の存在は徐々に浸透しつつある。

外食チェーンDX化の先にある未来とは

 どの店舗でも安定したクオリティのメニュー・サービスで消費者の食を支え、食べることの満足感を与えてきた外食レストランチェーン。コロナ禍で人流が遮断されるという緊急事態は、そうした当たり前の追求が万能でない事実を突きつけた。

 いつかコロナ禍は終わるという楽観論は霧消し、外食チェーン各社のテーマはどんな時でも安定して質の高い食を提供し続けられる体制の構築へと完全にシフトした。そのひとつのカギがDX。人との接触がサービス品質の源泉だった外食チェーンがいま、環境変化に適応するための大変態へ向け、技術革新の波に乗りながら静かにもがいている。

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