アパレルはテック企業になる!10年後ユニクロに孕むリスクと世界地図の激変とは
不気味な中国企業の動向とこれからをどう読むか
そして、我々の議論は当日のハイライトである中国に進む。彼らが最も気にしていたのはSheinで、「3日で3000SKUを生産できる」などという分析は「あり得ない話」と、無視をしており、世界で起きている「インフレーション」との関係、スマートファクトリーなど存在せず、広州の縫製工場ビルに残された在庫をどのようにビッグデータ化しているのか、また、その活用方法や、次のモンスターが現れるのか、などの質問や討議が矢継ぎ早にでてきた。
私の答えは、「中国はもはや米国に次ぐデジタル国家となっており、自国民は世界一のプライドをもっており、昔のように途上国成金国家がブランドモノを買いあさるようなことは今後は起きない」ということ。「したがって、“より高く、より大きく”の資本主義1.0で頭角を表すのは、皮肉にも共産主義国家の中国企業の可能性が高く、日本企業のブランドは次々と買収の対象になるだろう」というものだ。
実際、マークスタイラー、レナウン、バロックジャパンなど、日本を代表するブランドが既に中国資本となっていること(レナウンは、ダーバンのみ小泉アパレルが引き受けた)を説明したところ、驚いていた。ただし、その中国リスクは、やはり「SDGs」であり、例えば、数千という中小工場で数千SKUを安価に買い取って越境ECで販売するモデルは、早晩行き詰まる可能性が高い」と説明した。
その理由は、アパレルビジネスで環境負荷を与える工程は生産工程であり、今後、アパレル企業には、こうした素材、使用薬品、労働者の労働環境などの監視責任、計測責任、管理責任が義務づけられるからだ。つまり、どこの誰が残したかもわからないアパレル企業の「残り物」を、自ら縫製仕様書を書くこともせず(考えてもらいたい、平均単価2ドルで1兆5000億円だ。一枚の商品に仕様書など書くはずがない)、トレーサビリティも製造物責任もあったものではないからだ。
話をまとめると、以下のようになる。
1)欧州アパレルは成長が止まるが、新たな勝ち方の定義を作る
2)ユニクロは伸びしろが極めて大きいが、国家間の政治に翻弄され、また日本市場の将来に希望はない
3)中国企業は経済大国2位がゆえの優等生としての見本と手本を見せなければならず、Sheinのような伝統的ストリートファイティング(現場の穴を利用した勝ち方)で、世界一になっても世界はそれを認めないだろう
つまり、欧州、日本、中国それぞれに、成長の種とリスクをもっているわけだ。
今回提示した論点は、海外有識者との討論を経て醸成された、あくまでも私自身の意見のなかから日本のアパレル関係者に知ってもらいたい、あるいはさらに議論をしたい内容だ。ぜひ、一緒に討議していきたいと思う。
プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
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