アパレルはテック企業になる!10年後ユニクロに孕むリスクと世界地図の激変とは

河合 拓
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ユニクロは世界一になれるのか?

柳井正社長
柳井正社長 (写真はロイター)

次に我々の議論は「この先10年後ZARA、H&M、ユニクロは依然トップに君臨しているのか否か」へと移った。まず、彼らの欧州アパレルの予想は「これ以上成長は見込めない」「さまざまな数字、KPIを分析しても成長はストップする」というものだったが、私はここに異を唱え持論を展開した。以下、私の主張は以下のようなものだ。

我々は、いまだかつて人類が経験したことがない、経済の第二ステージ。つまり、サステイナブル経済に移行しており、企業の勝敗のメトリクス(尺度)が大きく変わるが、そのメジャーメントは欧州から出てくる可能性が高いというものだ。実際、ZARAHM、ユニクロの世界のビッグ3で、米国輸入が禁止され、中国の綿糸の使用を疑われ、フランスで当局に査察に入られたのはユニクロだけだ。私は、日経新聞でこうした人権問題は国主導でやるもので、今回のユニクロに非があるとは思えないと答えた。政府が「人権デューデリ」をやる前の、211217日の日経本紙で、私が持論を発表しているのがその証拠だ。

このように論点は、資本主義1.0の世界では、欧州アナリストが示すような分析は可能だが、資本主義2.0 (サステイナブル経済下)において、企業価値を計るのは本当に売上・利益なのか、ということである。古くから「私たちはとうの昔にやっていたぞ」といえる欧州アパレルが有利なことは明白だ。例えるなら、野球のルールを突然変え、三振でなく4回ストライクをとらねばアウトにならない、と言い出すようなものだ。少なくとも、我々アジア人はそう思うだろう。

もう一つが、私は過去、「ユニクロは早晩世界一のアパレル企業になる」と答えたが、その根拠は肥沃な成長余地を持つアジアにZARAH&M以上に店舗をもっているからだ。しかし、そのアジアでユニクロは負けはじめている。つい最近、32日の日経新聞の報道によれば、ユニクロの国内市場での売上は、コロナが猛威を振るう昨年対比でなんと14%減。しかも、7ヶ月連続で昨対比マイナスとなっているようだ。確かに、第一四半期の説明では、9-10は暖冬により売れなかったが、それ以降、特に今年に入って寒さは極寒の如く、私もダウンの行方次第で勝敗が決まるなどと述べていただけに、この減少は残念以外の何者でもなかった。

私は、欧州ビッグアパレルが「後出しじゃんけん」の如く、「これがESG経営だ」といって、従来の「より大きく、より高く(売上と利益)」という軸に、異なるルールを持ち込み、勝ち方の定義を変えて挑んでくるだろう。また、ファーストリテイリングは国の産業政策や米中経済戦争の狭間に囲まれ、思い通りに経営ができなくなる可能性があることを加え、必ずしも欧州アパレルの失速は正しい分析ではないことを述べた。

これも、彼らは「極めてユニークだがあり得る話だ」と評価をしてくれた。

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