アパレルはテック企業になる!10年後ユニクロに孕むリスクと世界地図の激変とは
ユニクロ一強の理由を誰も分かっていない愚
次の論点が「ユニクロ一強」だ。7.5兆円ある国内市場において、ユニクロだけで8000億円、g.u.で2500億円を占めている。ファーストリテイリング全体で国内で1兆円以上の売上を上げているのである。
私は、次世代を担うアパレル業界の若手幹部候補層に「なぜユニクロ一強が進んでいるのか?」と聞いた。「ベーシックに特化して、特定のセグメントに依存しないからだ」と、多くが教科書に書いてあるような答えだった。
そこで「では、なぜ、g.u.は2500億円もあるのか?ベーシックに特化すれば8000億円規模にもなるなら、君の会社でもやればいいじゃないか」と聞けば、まともに答えられた人はゼロだ。あなたなら、この質問に答えられるだろうか?
産業崩壊ともいわれはじめているアパレル産業で一社だけが世界企業になっているこの不思議から、同社の原宿進出時には「こんなものはファッションじゃない」と認めず、ここまででかくなれば「彼らは例外だ」と、また、思考の深みから逃げてゆく。一強の理由や、他社が真似できない参入障壁は何か、という経営の基本さえわかっていない。
世界のトップアパレルには大御所の感覚経営はない
ユニクロ含め、1ブランドで1兆円近い売上*を誇っている世界のトップに君臨するアパレル企業に、感覚頼みの「大御所」はいない。
*LVMHやリシュモングループなどは、多彩なMDやブランド群で構成され、1ブランドあたり売上は1兆円もない
トップメゾンは、全くビジネスモデルが違うことは断っておこう。例えば、LVMHの「カシミヤを着たオオカミ」、ベルナール・アルノー氏は企業買収とビジネスの専門家でクリエイター、デザイナーではない。メゾンのビジネスモデルは別途解説したい。日本のアパレルに未来があると無責任に語り、基礎的な分析を怠って、成功事例として、このようなトップメゾンの事例ばかりを出す日本人研究者が的外れな議論をしているから、真実を正確に知っておく必要があるからだ。
考えてもらいたい。ユニクロは「ファッション・ポジション」から遠ざかり、ZARAやH&Mは、彼ら欧州のアナリストによれば「デジタルデータ」による解析でトレンド分析しているとのことだ。思えば、10年で1兆5000億円に成長した中国のSheinも、デジタル・マーケティングがトレンド解析のエンジンだ。
つまり、世界のモンスターになるためには、日本で信じられている「大御所の感覚予測」ではダメだということなのだ。そうなると、MD構築後のオペレーションは、PLM (Product lifecycle management)でほとんどが制御可能だ。Sheinのように、数千という中小の工場の残反、残品をクラウドに挙げシンガポールで集まったビッグデータと突き合わせし、AI が、広州工場が持つ膨大な原材料や残在庫の数をすべて解析、数万という世界中から集められた顧客からの注文を捌く。
このことからも、世界規模に展開するアパレル企業は「テック企業」になることは必然である。海外の有識者は「非常に斬新だが、リアリティのある視点だ」といってくれた。