日本、中国事業の異変と、積み上がる広告宣伝費… ユニクロ失速の秘密を分析する

河合 拓
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理由は深刻化?中国マーケットの失速

上海のユニクロ(Yongyuan Dai/istock)
上海のユニクロ(Yongyuan Dai/istock)

次に中国市場について見ていきたい。日本のアパレル企業でも中国市場で勝っている企業と苦戦している企業がある。中国市場全体の話なら、やはり国潮トレンドによる「日本というカントリーポジション」の低下と見るのが妥当ではないかと感じている。

正確な統計で証明することができないので、この影響は定性的に論じてみたい。ファーストリテイリングは「コロナによる行動規制」を売上不振の要因と挙げていたが、中国で私が最も信頼する幾人かの人に話を聞いても「中国でのアパレルビジネスは活況」で、2112月の繊研新聞も「日本の商社の中国内販売は増えている」と報じていた。もはや中国の若い世代にとって「Made in Japan」など、ファッション・トレンドの一つのオプションでしかなく、良ければ買うし、そうでなければ買わないというものになった。つまり「Japan」という言葉に特別な意味はもはやないということだ。

世代別では、30代を境に中国人の消費者意識は変化しており、その裏には世界第2位の経済大国という自信が垣間見られるということは前々回解説したとおりだ。ただし、中国で日本のブランドで、イメージ想起されるものといえば、ユニクロ・無印良品の二つだけとのこと。

ファーストリテイリングは、国内事業とグレーターチャイナ事業が228月期第1四半期決算で減収減益となった一方で、総売上の約10%程度しかない欧米(2021年8月期決算短信より算出)の大躍進を強調していた。だが、そもそも10%程度しかない市場での「大躍進」は、投資家の説明として本当に十分なのかと思わざるを得ないし、そもそもユニクロ世界一の前提は、ZARAなどのグローバルSPAと比較し、アジア市場での販売拠点の数が競争優位であるという説明だったはずだ。株価もこうしたストーリーを組み込んだアナリストの説明で10万円を超えたと想定するし、同社もそれをわかっていないはずがない。何事にもシャープで、時間のムダである老人達のシャンシャン会議には絶対に顔を出ない同社を尊敬して止まない私だが、“大人の説明”でなかったのかと思うと複雑な心境となる。

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