ネットスーパー事業の展開を始めると必要になってくるのが、オンライン上での宣伝・集客だ。しかし、しかし、競合各社もオンラインマーケティングへの投資に注力するなか、何から着手すればいいのか。まずは無料で始められる、ネットスーパーのWebサイトに集客を図るための施策を伝授する。
各社オンライン上での
マーケティングに継続投資
2020年のCOVID-19および緊急事態宣言の影響を受け、消費行動におけるオンラインの比重が増えてきたのは論を待たない。「オンラインで買物をする機会が増えてきた」と消費者としても実感しているのではないだろうか。
プリンシプル(東京都/楠山健一郎社長)ではデータ分析を通じて企業のオンラインマーケティングを支援している。コロナ禍でのオンラインシフトによりあらゆる業種からの問い合わせが増え、宣言解除後にもその数や各社のオンラインマーケティングへの投資が減ることはなかった。各社、消費行動の変化を見越し、少なくとも投資を維持していくだろうと思われる。
図表1はGoogleが開示している、特定キーワードの検索回数を分析できる「Googleトレンド」における「ネットスーパー」の検索状況の推移だ(期間:22年1月9日より過去5カ年)。検索数の変化はそのキーワードが探されている件数、すなわちニーズの変化と考えて欲しい。20年4月に発令された初回の緊急事態宣言前後に急速に増え、その後も21年秋の宣言解除後まで高く推移していることが見てとれる。
集客経路の3分の1が
検索エンジン経由
このデータでお伝えしたいのが「消費ニーズを定量的に読み取れる」だけでなく「こうした情報が無料で得られる」ということである。
消費行動のオンラインシフトにともない、ネットスーパーへ参入する企業も増えている。しかし、Webサイトを構築したまま放置していたり、オンラインマーケティングには多額の投資や高額なコンサルティングが必要でないかと二の足を踏んだりしているケースも耳にする。
そうしたなか、主にGoogleが提供するプラットフォームにより一定のことが無料できることを本稿で知っていただき、オンラインでの集客策を始めるきっかけになれば幸いである。
現在Webサイトの集客経路の3分の1~半数が「Google」などの検索エンジン経由だ(弊社調べ)。そうしたなか、オンライン集客にあたって重要となるのが、ユーザーが検索エンジンで情報をサーチした際に、結果の上位に表示されるようにすることだ。
このように検索語句に対して、検索エンジン上で表示される順位を上げていく施策を、SEO(Search Engine Optimization)と呼ぶ。
検索エンジンは大まかにいうと特性として、「検索者が欲しいと考える情報が掲載されたページ」を上位表示するように設計されている。つまりWebサイトを運用する事業者は、消費者が欲しがっていると考えられる情報をサイト上に載せていけば、上位表示につながるのだ。そのためにはまず、そもそも「現在どのような消費者のニーズがあるのか」を掴むことが必要になる。
検索語句の意図を掴み
上位表示をめざす
ここでデータの解釈について触れておきたい。検索語句「ネットスーパー」の検索数はその全てが「ネットスーパーで買物をしたいニーズ」の顕れとは限らない。検索語句にはそれぞれ「意図(インテント)」が込められているものだ。たとえば「ネットスーパーは何たるかを調べている」などの情報収集ニーズである場合なども想定される。
現在、検索エンジンで検索した際の表示結果は、おおむね語句ごとの「意図」を検索エンジン側が自動で解釈し、消費ニーズに合った検索結果が表示させていると考えてもらってよい。
この特徴を理解したうえでSEOの具体的なアプローチについて説明していこう。消費者がオンライン上で「ネットスーパー」を検索するシーンを考えてみてほしい。
ネットスーパーは商材とする生鮮品の場合、サービスエリアは限定的だ。そのためおそらく消費者の「意図」を想定すると、生活圏で利用可能なサービスを探すために「店名+ネット(オンライン または ウェブ)」や「地域名+ネットスーパー」と検索するのではないだろうか。
そこで、「ネットスーパー」とどのような語句が組み合わされて検索された場合に、自社のネットスーパーのWebサイトが検索上位にある状態をめざすのかを考え、それに沿って対策を打つ。
その組み合わせを考える際には「Googleトレンド」などツールが有用だ。地元の消費者がネットスーパーを調べる際はどのような検索語句が多いのかを推測して、「Googleトレンド」で実際の傾向が確認し、その語句をサイト上で訴求する。
こうしたアプローチで、「消費者が欲しがっている内容の情報がこのサイトに存在する」とアピールし、検索結果で上位に表示される機会を増やしていくのだ。ネットスーパーのオンラインサイトの運営の経験者は「タイトル」「ディスクリプション」など、ページの情報を変更した経験があると思われるが、それらの調整も施策の1つである。
話題性の高い商品・メニューで
自社サイトに誘致する
商品を軸としたアプローチ方法もある。消費者は特定の商品を探して、Webサイトで購入することもあるのだ。
この方法では今よく検索されている商品やメニューを掴む必要がある。たとえば、「シュトーレン」という主にクリスマスに食べられるドイツの伝統菓子がある。日本での5カ年の検索動向を調べると、図2の通り、検索数が増え続けていることが見てとれる。
この「シュトーレン」に含まれる意図は「シュトーレン(の出来上がり品)を探している」ほかに「レシピを探している」「シュトーレンとは何かを調べている」などが想定される。レシピを検索する場合は「シュトーレン レシピ」と検索するかも知れない。
「Googleトレンド」では、画面のタブでいくつかのカテゴリーに分けて調べることもできる(図3)。カテゴリ「料理、レシピ」を選択すると、Googleが「シュトーレン」の検索のうち「料理・レシピ」に属すると解釈される検索動向を表示できる。
結果を見ると、20年に比較してレシピの検索が減っているため、家で自分で手作りしようというニーズは少し落ち着いているのかも知れない(図4)。そうであるなら、出来上がり品の存在をサイト上のページで目立たせれば良いし、レシピとしての検索が増えていれば、調理レシピをサイト上で訴求すればよい。
今回は事例に「シュトーレン」を挙げたが、21年に流行したイタリア発祥の伝統菓子「マリトッツォ」を上手く提案するための手法として、マリトッツォがどのような検索の変遷を辿ったか、現在のニーズはどうか調べる・・・と考えるとイメージがつきやすいかも知れない。
SNSを活用して
トレンドを調査する
オンライン集客の原則として、「消費者が探している情報をサイト上で訴求する」ことと記載した。消費者のニーズを調査する方法として、主に検索エンジンを通じた方法を提示してきたが、「Instagram」をはじめとしたSNSおよびそのハッシュタグの数や変遷を通じて把握する方法もある。SNSならば店舗で運用していることもあるだろうし、とっつきやすいかも知れない。
繰り返しになるが今回提示した方法は無料で一定の範囲までできる事柄に留めている。
ネットスーパーに関しては、他業界と比べればオンライン上での競争は始まったばかりと言える。競合が増えてきたと感じたらネット広告やネットスーパーのプラットフォームに出稿をするなど、有料の手段を考えてもよいだろう。だが、まずは無料で多くのことができるので、手を動かしてみることでネットスーパーに見にくる人が増えた、などの小さくとも成果を上げてもらえたら嬉しい。
【執筆者】
菊池 浩之
プリンシプル マーケティングディビジョン ディレクター。SEOコンサルタント。解析およびSEOの2つの知見を掛け合わせたアプローチによる実績多数
【会社概要】
会社名: 株式会社プリンシプル
所在地: 東京都千代田区神田駿河台4-2-5 トライエッジ御茶ノ水10階
代表者: 楠山 健一郎
設立: 2011年
URL: https://www.principle-c.com/
事業内容: デジタルマーケティング戦略、デジタルトランスフォーメーションにおけるコンサルティング、デジタル広告、SEO、Web解析などのデジタルマーケティング支援、BIツール導入、DMP構築などデータ活用プラットフォーム構築支援