急拡大するネットスーパー選択肢は多彩 自社にあった戦略の見つけ方とは

大宮 弓絵 (ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長)
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自社で“選択する”時代へ、割り切り型の手法も登場

 このようにネットスーパー市場の事業環境やその特性がかつてよりも具体的に見えるようになり、単純に「まずは参入しよう」と考えるような初期の時代は終わった。今は想定される競争環境のなかから自社にとってのネットスーパーの必要性を見極め、さまざまな選択肢のなかから各自に合った方法を選び事業を展開していく、新しい時代に突入しつつあるといえる。

 こうしたなか、すでに独自の事業展開を進めている企業もある。たとえば楽天グループとの協業によって「OMO(オンラインとオフラインの融合)リテーラー」をめざす西友は、物流センターを続々と稼働させるなかでも、センター出荷型だけでなく、顧客との“接点”である店舗からの出荷方式も引き続き重視し、並行して運営する考えだ。

 三重県で13店を展開するローカルチェーンのスーパーサンシは、大手企業との差別化策として40年以上前から食品宅配サービスを開始。ネットスーパーの運営ノウハウを積み重ねて、店舗事業より収益性が高く、全体売上高の2割近くを稼げる事業にまで育成している。

 そのほかオーケー(神奈川県)は21年10月、想定利用者を「熱烈なオーケーファンのお客さま」に設定し、最低注文金額は1万円(税抜)以上、さらに配送料も徴収するという異例のネットスーパーを開始している。同社のように自社へのロイヤルティの高い顧客層向けのサービスとして、割り切ったかたちでネットスーパーを展開する企業も出てきている。

 「今後ネットスーパーをどのように展開していくか──」

 ここまでの流れから、それはまさに中長期的な自社のあり方、将来生き残るための戦略を考えることであることがわかる。ネットスーパー新時代の号砲が鳴った今、各社が回答を迫られている問いだといえよう。

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記事執筆者

大宮 弓絵 / ダイヤモンド・チェーンストア 副編集長

1986年生まれ。福井県芦原温泉出身。同志社女子大学卒業後、東海地方のケーブルテレビ局でキャスターとして勤務。その後、『ダイヤモンド・チェーンストア』の編集記者に転身。最近の担当特集は、コンビニ、生協・食品EC、物流など。ウェビナーや業界イベントの司会、コーディネーターも務める。2022年より食品小売業界の優れたサステナビリティ施策を表彰する「サステナブル・リテイリング表彰」を立ち上げるなど、情報を通じて業界の活性化に貢献することをめざす。グロービス経営大学院 経営学修士

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