ZARAとユニクロだけがなぜ余剰在庫を撲滅できるのか?本人達も気づいていないメカニズムとは

河合 拓
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もはや商社の存在なくして、アパレルは生きられないという現実

繰り返すが、「リードタイム」というのは、リスクをもった瞬間を起点とする考え方だ。だから、アパレル企業が、素材もないのに商社を呼びつけ、とにかく探してつくれ、とムチャをいって商社を脅し、商社はこうした非科学的MDにお付き合いすることが日本のアパレルを救うことだと勘違いしている構造がおわかりだろうか。
今、アパレルはコロナで山のようなデッドストックを持ち、さらに、この冬の暖冬でテクニカルノックダウンを食らっている。セレクトショップはディスカウントの嵐だ。

 私は、コロナ前とコロナ以降で、「戦略転換」のパラダイムシフトが起こったと思っている。それは、これまでの商社外しから、運転資金のショートと、D2Cによる越境EC、そして、これから10年の日本市場の絶望的現実により、逆に商社といかに取り組む戦略が広範囲に変わってきたということである。
ところが肝心のアパレル業界はまだPLM導入ですったもんだしている。コロナで資産流動性が失われたアパレルが過剰なシステム投資をすれば、運転資金ショートし即死さえ免れないことを知るべきだ。
さらに、商社も独自でPLMを導入した。だから、彼らと従来のOEMビジネスをやれば恐ろしいほど中太りした流通コストで復活の可能性はゼロとなる、結果、PLMだらけのバリューチェーンを作り上げ、すでにアジアから入ってきているD2Cという中間流通さえいないビジネスモデルに完敗することになる。

 もはやアパレル企業に体力は無い。商社としっかり組み、資金、人材、海外ネットワークの活用、デジタル技術投資などを包括的に取り組み、私が提案する「Tokyo showroom city 構想」に向けた戦略の話し合いを行うべきだろう。度重なる変異株により、アパレル企業に戦略的打ち手はなくなった。今、商社なくしてアパレル産業は持たないことを知るべきで、商社もより高い視点で産業界を俯瞰し、不要とされているOEM流通から自ら抜けてアパレル企業の価格競争力を高め、上記のようなアパレルの業態改革を共同で実現する構想力と実行力が必要となっている。

 

 

プロフィール

河合 拓(経営コンサルタント)

ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、政府への産業政策提言などアジアと日本で幅広く活躍。Arthur D Little, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナーなど、世界企業のマネジメントを歴任。2020年に独立。 現在は、プライベート・エクイティファンド The Longreach groupのマネジメント・アドバイザ、IFIビジネススクールの講師を務める。大手通販 (株)スクロール(東証一部上場)の社外取締役 (2016年5月まで)
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/index.html

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