「デジタル化と小売業の未来」#17 小売とメーカーの境目がなくなる?10年後の小売業界未来予測

望月 智之 (株式会社いつも 取締役副社長)
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店舗競争=商品開発競争

 「小売」側を見ると、インフラ的なポジションになる会社は今後も残ると考えられます。「店舗に行けば自分が使っているものが必ずある」という状態が求められるため、コンビニやドラッグストア、イオングループなどの生活インフラのような店舗がさらに強く根付くでしょう。

 その一方で、これまでの連載で見てきたように、今後は情緒的・体験型の店舗が注目されるようになります。むしろ、変化がなければ従来型の店舗形態は淘汰されます。体験のような価値が上乗せされたり、非日常の体験ができる店舗が増えたりすると、お店の使い分けが進み、月に一度は友人や家族と必ず行くという使われ方になっていくでしょう。

 また、すでにメーカーだけではなく、PB(プライベートブランド)のように小売がモノを作る時代に入っています。今後もこの流れはさらに広がり、「小売の能力=売れるブランド商品をつくる能力」になりつつあります。つまり、小売としてはお店を出してオペレーションする能力も大事ですが、それ以上にメーカーとしての機能をどう拡大するかという点がより重要になると考えられます。

 世界的にも「店舗競争=商品開発競争」だと言われています。唯一無二の店舗をつくるということは、その店舗にしかないブランドをつくることにほかならないのです。こうなると、メーカーと小売の境目はより曖昧になります。どちらにせよ優れたモノをつくらなければなりません。

 そうなると当然、消費者に商品の情報をデジタルでうまく届ける能力も必要です。物流やブランディングなどの課題も浮き彫りになるでしょう。そしてこれらは、D2Cブランドが今まさに抱えている課題でもあり、それらを解決した先に小売のマクロ的な全体像が浮かび上がるのです。

 

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記事執筆者

望月 智之 / 株式会社いつも 取締役副社長
1977年生まれ。株式会社いつも 取締役副社長。東証1部の経営コンサルティング会社を経て、株式会社いつもを共同創業。同社はD2C・ECコンサルティング会社として、数多くのメーカー企業にデジタルマーケティング支援を提供している。自らはデジタル先進国である米国・中国を定期的に訪れ、最前線の情報を収集。デジタル消費トレンドの専門家として、消費財・ファッション・食品・化粧品のライフスタイル領域を中心に、デジタルシフトやEコマース戦略などのコンサルティングを手掛ける。ニッポン放送でナビゲーターをつとめる「望月智之 イノベーターズ・クロス」他、「J-WAVE」「東洋経済オンライン」等メディアへの出演・寄稿やセミナー登壇など多数。

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