Z世代の衝撃#1 ライブコマースで「インフルエンサー・マーケティング」が失敗する衝撃的理由

河合 拓
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デジタル戦略立案の正しいプロセス

Giuseppe Lombardo/istock
Giuseppe Lombardo/istock

密室で何度議論しても正しい戦略は生まれない。ましてや、万人受けする戦略やデジタルソリューションなどもない。なぜなら、企業ごとに顧客の顕在化された解決すべき課題や潜在的解決すべき課題はすべて違うからだ。時に膨大な数の顧客の「生の声」を聞き、その声を自分なりに解釈・分析し、「このような世界があれば、この人たちはもっと喜んでくれるだろう」というビジョンを創造する。それを最新のテクノロジーを使ってどう実現するかを考える。それが、デジタル戦略立案の正しいプロセスである

判を押したように「DXには目的が必要だ」というベンダーが後を耐えないが、私から言わせれば、「DX成功にはビジョンが必要だ」が正しいビジョンがあるから目的が明確になのだ。とってつけたような「リードタイムの短縮化」や「生産性の向上」などは、イノベーションとはいえないレベルの改善である。こんなものは目的でもなんでもない。人を震えさせるほど感動させるビジョンを見せてこそ経営ではないか。

デジタルベンダーを自社に呼び、「最新OMOストア」「越境EC」など、お決まりのプレゼンを聞いてスタートするプロジェクトの多くは「こんなはずではなかった」となるのが関の山だ。これは、全てをデジタルに期待するクライアントと、売上を上げたい思いから誇大表現で売り込むデジタル企業の掛け合いから生まれる悲劇である。

Z世代を追いかけても破滅が待っている

特に、次の10年を担う「Z世代」を取り込もうと考えている人は、まず、「Z世代」の人口構成比のデモグラフィックを思い出せば良い。今、商品の半分以上を構成しているバブル世代はあと10年で老後を楽しむ世代となり、スーツやオフィス着の売上は壊滅的となる。さらに、次のZ世代の人口構成比と消費パワーは極端に少なく、また、彼らは古着やサブスクを「生活ROI」で買っている。ここに企業が集中すれば、今のオーバーサプライ(供給過剰)がさらに増大し、生産の半分が毎年残っているどころでなく、生産の70%は売れない世界が待っている。もちろん、そこにたどり着くまでに産業界は崩壊しているだろう。誰が考えても論理的帰結である。

「Z世代」は、無駄な買い物はしないし「古着」を好んで買う。私が上記で説明した単純な構造となぜ向き合おうとせずに、昔話や枝葉の議論に終始するのだろうか。
しかし、このZ世代はアジアのファッションリーダーとなる可能性はある。特にTOKYO渋谷、代官山、キャットストリートなどZ世代のファッション聖地で一日過ごしてみれば良い。こんな街は世界のどこを探してもない。「ユニクロTokyo」や「TOKYO BASE」に、TOKYOをファッション・ショールームシティとし、彼らからマネタイズすることを諦め、彼らに自由に服を楽しませ、Sheinのように現地のライブコマースPR会社と組み、TOKYO ファッションと日本ブランドの技術を成長著しい東南アジアや中国富裕層に売る。
今、韓国がエンタメに国家戦略として取り組んでいる手法から学ぶべきだろう。時間は限られている。いずれ、アジアの国にショールームシティのポジションまで奪われれば、日本から製造だけでなくブランドも消えて無くなるだろう。

 

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プロフィール

河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)

ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)

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