第88回東京薬科大学実務実習を目的に附属薬局オープン「予防」「治療」「介護」を柱に拡充

2014/11/14 23:55
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 東京薬科大学(東京都八王子市/今西信幸理事長(写真右)、笹津備則学長)は今年7月、他大学に先駆けて、八王子市内に「東京薬科大学附属社会医療研究センター/東京薬科大学附属薬局」を開設した。

 

 附属薬局の床面積は532.53㎡。待合室には12の服薬指導窓口を設け、1日当たり約500枚の処方箋に対応することを想定しており、隣接する東海大学医学部八王子病院をはじめとする、患者への対応に当たる。同局は、同校の学生に、薬学教育モデル・コアカリキュラムに対応した実務実習の機会を提供することも目的としており、将来的には24時間調剤受付を実現し、同様の附属薬局を複数誕生させる計画もある。

 

 同大学は質の高い薬剤師の誕生をめざして取り組みを進めているが、他大学に目を転じれば、東大・京大など国立大学の多くは6年制の定員を絞ることで「薬学研究者」の育成に注力する姿勢を表明。さらに、平成15年度以降に28大学で薬学部が新設された私立大学では、入試偏差値の上位校と下位校で35もの格差が生じており、志願者全員入学の大学まで登場。このことが今年度の薬剤師国家試験(国試)における60.84%という低合格率を引き起こす一因にもなったと分析。

 

 同校の今西理事長は、薬学6年制への移行に伴い、学会や実業界で質の高い薬剤師の大量発生が期待されていたなかにあって、「6年制の卒業生が誕生する前の時点で、すでに入学志願者削減を図る大学が登場している」ことなどを理由に「国試合格者数は減少する」と主張し続けてきた一人。

 

 学校経営者の立場から「志願者全員入学」に一定の理解を示しながらも、そうした大学は「学生に対して『国試に合格させる』という責任を果たしていない」と指摘し、こうした学生の救済を目的として、薬剤師数が増加しないことを前提に「調剤テクニシャン制度」の新設を検討することを提唱。合わせて「OTCは患者個々の状態を確認したうえで商品を選択しなければならないため、調剤よりも難しい一面がある」と述べ、受験生のコミュニケーション能力を図る意味で、薬学部の入学試験でも医学部同様に「面接」を取り入れることを提案している。

 

 なお今西理事長は、「これからの薬局は『予防(予防薬の取り扱い)、治療(調剤)、介護』の3つを提供する場でなければならない。とくに『介護』は医師の仕事ではなく、物販を伴うことから看護師が担うのも適当ではない。薬剤師がメーンになって担当するのが望ましい」と語り、この3つを同時に提供できるドラッグストア(DgS)が今後の薬局の主流になると断言。そのうえで、DgSに対して「治療」にもっと積極的に関わるよう、積極的に活動している。

 

 薬業界では「薬剤師の地位向上」に向けた議論が盛んに行われているが、国試の合格者数が今後の一定期間増加しないとなれば、薬学部や薬科大学、ひいては薬剤師の存在意義まで生活者から問われる事態に発展しかねない。そうならないためには、薬剤師が実際の仕事を通して生活者に存在感をアピールする必要がある。その意味で今西理事長の「今後の薬局は『予防、治療、介護』」という東京薬科大学の方針と取り組みは、有用なアピール手段の1つと言えよう。

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