第14回【ドラッグストアのITシステム】新時代の仕組みをどれだけ効率良く構築するか

2010/06/26 00:00
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 国内の大半にブロードバンドインフラが整い、各種IT機器の価格も下落してきた今日。小売、流通業界においても、システムの進歩には目覚ましいも のがある。たとえば、4月から都内のドラッグストア(DgS)では電子マネーによる個人認証とPOSデータによる購買履歴、さらにデジタルサイネージ (*)を連動させた最先端の実験が展開されている。また、iPhoneなどのスマートフォンに搭載されるAR(拡張現実)機能を活用し、モニター越しに店 舗や商品を映し出すことでクーポン情報が表示される実験、さらには高速データ通信を駆使し、ジェネリック医薬品の店頭在庫を店舗間相互に融通するシステ ム、全国規模に広がる従業員の情報共有を社内SNS(ソーシャルネットワーキング)で実現しようとする試みなど、各方面でさまざまなシステムが導入され始 めている。

 

 DgSを取りまく一般的なITシステムには、どのようなものがあるだろうか。売上・仕入れ・在庫管理、POSシステムをはじめ、労務管理、社内イ ントラ、ポイント制度、モバイルを含むwebサイト、E-コマース。さらに調剤併設店なら、レセコンや服薬指導、医療用医薬品の在庫管理なども含まれる。 いずれにしても、非常に幅広いシステムが必要とされている。薬剤師教育を、社内ネットで行っている企業も少なくないだろう。

 

 中小の薬局、DgS企業にとって、こうした多岐にわたるシステムを構築することは大きな「バクチ」だ。大手ならば、じっくりと腰を据えて、自社の 目的に到達できるシステムを一から構築することも可能だろう。しかし、中小の経営規模ではそうはいかない。「もし大手チェーンのシステムを、そのまま流用 することができれば……」と考える企業も、もしかしたらあるかもしれない。

 

 調剤薬局チェーン大手の日本調剤では、そうした中小の調剤薬局企業に向け、自社で開発した調剤薬局内システム提供を行っている。「弊社システムの 強みは、弊社店舗とほとんど同じシステムを使うことができる点。とくにジェネリック品のデータベースは、弊社の薬局と同じ即時的なアップデートで情報を提 供できます」と、同社システム部の河野文隆部長は話す。さらには薬剤師教育システムにおいても日本調剤は、社内向け教育システムを外部に開放した 「JPLearning」を昨年4月から提供している。「費用的には利益が出る額ではないが、薬剤師全体のレベルアップにつなげてもらいたい」(同社、イ ンテリジェンス部・大貫薫人氏)。

 

 ポイントカードやモバイルクーポンの例を見るまでもなく、消費者の「IT慣れ」は加速度を増している。また、ネットワークを介して扱えるデータ量 は増加の一途でもある。小売業にとって、いまや新時代ITシステムは避けて通ることのできない道だ。いかに効率良くシステムを導入していくべきか。今後も 業界を取り巻く情報には、注意を払っていきたい。

 

*デジタルサイネージ……モニターなどに通信機能を用いて、リアルタイム性を実現した、電子看板

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