世界がキャッシュレス化に向かっているようです。
もっとも顕著なのは、「アリペイ」「ウィーチャットペイ」の故郷である中国です。QRコード決済は、初期導入投資額が小さく、中小零細店舗も簡単に始められることもあり、中国全土に一挙に拡大していきました。クレジットが浸透せず、偽札が多く、長時間のレジ待ち回避・・・といった背景が普及の後押し役となりました。
しかし、米国でQRコード決済はいまのところ流行する兆しがありません。
「アメリカはクレジットカードが普及しきっているのでそもそもキャッシュレスなのですが、逆にクレジットカードに慣れきってしまっているため、スマホなどを使ったデジタル決済になかなか進まないというハードルがあります。上位集中しているので金融業界側にもインフラを変えるモチベーションがありません」と分析するのはR2Link代表の鈴木敏仁さんだ。
地域や歴史によって、マーケットの性質はまったく異なることを認識しておかなければいけないということでしょう。
もうひとつ注意を払いたいのは、逆の動きです。
キャッシュレス化のトレンドを受け、現金の取り扱いは減るだろうと予測する大手銀行は、設置のための投資や維持費がバカにならないATM(現金自動預け払い機)の台数削減に向き始めました。一方で、セブン銀行やゆうちょ銀行は、この流れを勝機ととらえて、ATM拡充に動き始めています。
1つの大きな波が起こると、必ず死角が生まれます。
それを見逃すことなく、機敏に動き、対応する企業に本当の強みを感じます。
『流通テクノロジー』誌2018年9月15日号 編集後記より