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代走屋

 速水譲次を彷彿させる――。

 速水譲次は漫画『巨人の星』に登場する選手だ。「100m、10秒5」の俊足の持ち主でメキシコ五輪の強化指定選手だったが、「金メダルでは食べられない」との理由で巨人に入団。“代走屋”として期待され、主人公の星飛雄馬には猛烈なライバル心を燃やす。

 

 その速水譲次を彷彿させるのは、誰かと言えば、同じ巨人軍の現役、鈴木尚広【たかひろ】選手だ。

 1978年生まれの37歳は、超遅咲き。公式戦での安打数は350本ほどでイチロー選手なら2年で達成してしまうほどの少なさだが、驚くべきは走塁だ。

 1軍13年間の盗塁数は208。そのうち代走での盗塁数113(2014年まで)は日本(NPB)記録だ。

 東京ドームでは、試合の終盤戦の反攻機に名前を告げられると、The Blue Heartsのヒット曲『Train-Train』とともに塁上に現れ、その場の空気を一変させる。

 存在感は充分で、2015年にはオールスターゲームにも選出された。

 

 そして、なんと鈴木選手の年俸は推定5000万円。足だけでも高額所得者になれる事実を見せてくれたのである。

 

 こうした過去にはいないような“オンリーワン”選手は、野球少年たちを大いに刺激する。今年の夏の甲子園で一躍注目された関東第一高校のオコエ瑠偉選手は、目標とする選手の1人として、鈴木選手の名前を挙げている。

 

 そう考えると、鈴木選手の功績は、数字以上に大きいわけであり、新しいプレースタイルでファンを楽しませてくれるとともに、球界の活性化にも貢献している。

 

 鈴木選手のような一芸特化型で切り口は、プロ野球界には、まだまだありそうで、野球選手にとっても、ブルーオーシャンの考え方は当てはまるということになる。

 

 ※9月7日(月)から9月9日(水)まで出張します。次回の更新は9月10日(木)になります。休みがちで申し訳ありません。