トイレットペーパーなんて、みんな同じだと考えていた。
強いて違いを挙げるなら、紙質や切り取り線、香りや絵付けの有無、再生紙…といったところか――。
だが、トイレットペーパーメーカーを取材すると、それ以外にも数々の特徴があることが分かる。
一番びっくりしたのは、利用者によって、トイレットペーパーの引き出し方が異なることを調査分析して、製品改良に充てていることである。
引き出しながら畳んでいくタイプや一挙に使う尺を引き出し後から畳むタイプなどに分類したり、日米の違いを織り込んだりして改革のメスが入れられていた。
価格訴求一辺倒の超コモディティに見える製品であってもメーカーは、調査開発費を注ぎ続け、日々革新に当たっているのである。
製造小売化時代を迎え、小売業各社は製造業の分野にどんどんと足を踏み入れるようになった。
しかし、小売業は製造に関しては、あくまでも“素人”というスタンスを忘れたくない。
1980年12月。西友は、「素材の選択」、「工程の点検」、「包装の簡素化」をテーマに家庭用品9品目、食品31品目の「無印良品」を発売し、その後、一大ブレークさせた。
ただ、覚えておきたいのは、西友は、フロックでこの事業を成功させたわけではないことだ。
かつて世界最大の小売業であった米シアーズと提携した際に、同社のプライベートブランド(PB)の開発現場で学んだ人たちが社内に多くいたことが大きな力となった。
シアーズによるPBづくりのノウハウを熟知した彼らが中核となって、製品開発に当たったからこそ、西友は成功したのである。その意味で言うなら、西友は“素人”ではなかった。
さて、一方こちらは大黒天物産(岡山県/大賀昭司社長)。
同社が中国RM(Retailing Manufacture)センターを竣工させ、製造小売業(SPF)にシフトする話は以前書いた。
http://diamond-rm.net/articles/-/11756
驚いたのは、その説明に当たった大賀社長が嬉々として製造法を語っていたことだ。
「讃岐うどんには、パッケージに《讃岐うどん》と記すための製造方法がある。表示するためにはいくつかの条件があるが、中国RMは、それらをすべてクリアしている。手打ち式方式やねんりきシステムを導入し、手捏ねミキサーを使ってパンのように延びのある生地をつくり、食感を変えている。包丁切りや熟成ラインで2時間寝かせるからおいしい。この機械を使って生パスタも手掛けたい――」。
トップ自らが、このくらい製造方法を熟知して、楽しんでいる企業は、きっと成功するのだろうと確信する。