昨日は、オール日本スーパーマーケット協会(大阪府/荒井伸也会長)の第52期定期総会が開かれた(@東京ドームホテル)。その特別講演としてカルビー(東京都/伊藤秀二社長)の松本晃会長兼CEO(最高経営責任者)の講演会があり、思わず聞き入ってしまった。
「Change or Die ~21世紀は消費者主権~」と題された講演会は、「『変革する気があるのか? ないなら(事業を)やめてしまえ』という意味です」とキツい一言から始まった。
ここでは、特に印象に残った話を2つだけ紹介したい。
1つめは、タイトルにある通り、生産者主権の時代はとうに終焉を迎え、消費者主権の時代を迎えているということだ。
生産者主権の時代は、「コスト+利益=売価」の公式が成り立った。しかし今は、これでは売れない。
消費者主権の時代には、「売価-コスト=利益」と真逆の事業に取り組まなければいけない。
だから、企業のマーケティング担当者の一番の仕事は、「この商品をいくらなら買ってくれるのか?」という売価を顧客の立場で探り出すことにある。
2つめは、データは否定しないが、踊らされてはいけないということだ。
POS導入などの恩恵を受け、現在、「売りに関するデータは腐る程ある」。そこで一般的な企業は、今年の販売データを元に次年度にはいくら売れるかを想定して、生産計画や仕入れ計画を策定している。
これを単純に図式化すると…
売れ!(販売計画)→作れ!(生産計画)→買え!(原材料購買計画)
となる。
ところが、実は次年度に何がどのくらい売れるかは“鬼”でもわからない。でも、データを無理矢理いじると数字は出てくるもの。ここで間違えてしまう企業が多い。
そこで、カルビーは、発想を転換して…
買え!→作れ!→売れ!
というように根本から変えてしまった。
まず、できるだけいい原材料を、できるだけ安く、多く買いすぎても構わない。仕入れた原材料は、全部製品化してしまう。製品化したらすべて売り切る。仮に売れにくい製品ができてしまったら、半値でもいいから売り切る、という形にした。
さて、松本さんは、1972年、京都大学大学院を卒業後、伊藤忠商事に入社。1993年、ジョンソン&ジョンソン日本法人に入社。事業部長を経て1997年、同社社長に就任。2008年、カルビー社外取締役就任、2009年から現職を務める敏腕経営者――。
製造小売化に舵を切る小売企業にとっては、とても参考になる。