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「これで良い」と言える状態などありえない

 商売における顧客第一主義は万国共通だ。「店は客のためにある」(故倉本長治 商業界前主幹)。米国ステュー・レオナルドの店舗前にある石碑には「ルール1:お客は常に正しい。ルール2:もしお客が間違っていると思うならルール1を読みなさい」と刻み込まれている――。お客が欲しいものを揃えることは、小売業の普遍的な課題と言っていいだろう。そのためには、お客が求めているものを常に分かっていなければいけない。

 

 ところが、ここ数年、お客はこれまで以上に大きく変化している。「キャベツや白菜などは、1個単位ではもう売れない。2分の1、4分の1単位も怪しく、ざく切りだけを検討している」とは、ある都市型食品スーパー企業の商品部長だ。とくに都心部は、働く女性が多く、高齢者が増え、老若男女を問わず単身世帯が増えるなど、過去に経験したことのないデモグラフィックと嗜好の変化が起こっている。

 

 もちろん小売業各社は目まぐるしく変わるトレンドをキャッチしながら、商品政策を随時変更するなどの涙ぐましい努力を続けている。しかしながら、そのスピードをあざ笑うかのごとく、お客はこの瞬間にもなお変化を続けている。ということは、小売業には「これで良い」と言える状態などありえないことになる。

 

 『チェーンストアエイジ』誌2014年6月15日号