「現役バリバリの時には、外に出て取材ばかりしていた」。
今年76歳になるベテラン流通記者と小一時間話す機会があった。
でもいまは、そこまで精力的に取材活動に当たることができないのだという。
年齢から来る体力の衰えは、もちろんある。だが、理由は必ずしもそれだけではない。
「多くの創業経営者が第一線から身を引いてしまって、魅力のある人物がいなくなってしまったことが大きい」のだそうだ。
「もう、スズキさん、ヤナイさん、ニトリさん、ヤスダさん、ヤノさん、ウノさん…くらいかなあ」。
ベテラン記者は指折りながら、名前を挙げた。
事業の創業時と拡大時に必要な能力は異なると言われる。
カリスマ的な創業者からサラリーマンにバトンが引き継がれるなかで、管理色・官僚色の強い経営と経営者が主流になっているのだろう。
それは、どちらが良い、どちらが悪いという単純な問題ではないことは誰にでもわかる。
ただ、企業から人間臭さが消えていくことは、記者にとって決して面白いことではないこともわかる。