メニュー

ローソン新経営体制に関する記者会見 玉塚元一次期社長発言

 ローソン(東京都/新浪剛史CEO〈最高経営責任者〉)は、3月24日に新経営体制に関する記者会見を開いた(@ホテルオークラ)。今日から、2日間にわたって、壇上に上がった新浪剛史代表取締役CEOと玉塚元一COO(最高執行責任者)の発言を紹介する。(談:文責・千田直哉)

 

 

 2014年5月1日付でローソンの代表取締役社長に就任することになりました。よろしくお願いします。

 

 ローソンは、1975年6月14日に1号店である「桜塚店」(大阪府)を出店。以降、ダイエーの傘の下、発展していった。それが「第一創業期」だ。

 2002年に新浪剛史(現社長)がローソンに入社。さまざまな改革を実行するとともに、コンビニエンスストア(CVS)業界では、考えられなかった多くの常識破壊にチャレンジし、数々のタネを撒いてきた。これが「第二創業期」である。

 今回は、私が新浪からのバトンを受け止め、この撒いてきたタネをしっかりと形にして、結果につなげていく。

 

 社長就任を正式に打診されたのは2週間前のことだ。責任重大だと実感したが、もっと大事なことは何を具体的に行うかだと頭を切り替えた。即座に気の置けない役員を数名集めて、やるべきことを書き出し、合宿をし、次のゲームプランを立てた。

 そこで練り上げたことを、早速、今日から、従業員や加盟店さん、取引先さんと共有していきたい。

 

 今回の人事異動で、三菱商事から竹増貞信氏(44)が副社長として入社する。大歓迎だ。私の興味はローソンが1ミリでもよくなることだからだ。

 ローソンのファンが増え、お客様に支持されるなら、三菱商事でもプロパーでもジーパン屋でも出身母体は関係なく、思い切り仕事をしてもらいたい。

 周知のようにローソンの歴史とは、M&A(合併・買収)の歴史だ。だから非常に多様性がある。

 要するにローソンがよい会社になるか、飛躍できるかがすべて。そのために竹増さんのような人が入社してチームに加わってもらえることはありがたいことだ。

 

 さて、現在、私に求められているのは、スピードある実行力だ。それを行使するためには、強い組織力が必要だ。私がリーダーになり、ローソンをより一層強い組織にして、さらに飛躍させていかなければならない。

 

 振り返れば、ローソンに参画して約3年半。この間、種々の取組を実行推進してきた。

 新浪からは、叱咤激励されたことはなく、叱咤叱咤叱咤の連続で鍛えられた。

 もうひとつ、私を鍛えてくれたのは加盟店さんだ。複数店舗を持つMO(マネジメントオーナー)さん約90人とは常に真剣勝負を繰り返した。

 エリア会やオーナーズミーティングでは、「なぜ、こんな商品を出したのか?」「なぜ、こんなふうになっているのか?」など強烈な突き上げがある。そのMOさんと正面から向き合うことでかなり鍛えられた。

 だから、私にとってローソン入社後の3年半は10年くらいの長い期間に感じた。

 

 ここに来てローソンは、ファストフードの充実やカウンターコーヒーの開発、店舗でつくる弁当、そして生鮮食品…と商品の強化を図っている。生鮮食品は、農業生産法人の「ローソンファーム」(現在16ヵ所で展開)を設立し、「エーザイ生科研」を子会社し中嶋農法のノウハウを導入するなど、こだわりのある商品を提供している。

 それらを中心に生活全体の品揃えを強化。「まちの“健康”ステーション」宣言をして、OTC(一般医薬品)を中心にヘルスケア商品を拡大。今後、5~10年のスパンの成長領域にも果敢に挑戦している。

 

 このように、過去12年間で新浪が撒いたタネ、この3年半にわたって一緒になって取り組んできたビジネスには、まだまだ可能性がある。確実に刈り取りたい。

 

 さて、社長就任に当たって5つの基本方針を掲げた。

 

 ひとつめは、ローソンの企業理念「私たちは“みんなの暮らすマチ”を幸せにします。」に忠実に則り、この浸透をさらに強化していくことだ。

 そもそも私がチームローソンに参画した理由のひとつは、「私たちは“みんなの暮らすマチ”を幸せにします。」という企業理念に感銘を受けたからだ。

 また、企業理念を信じて現場で一生懸命働く社員の姿にも感銘を受けた。

 

 前職の企業再生会社リヴァンプの時に実感したのだが、倒産した企業や倒産寸前まで追い込まれた企業――おかしくなった会社の従業員に「あなた何のために仕事をしているの?」「あなたの会社の経営理念は何なの?」と聞くと答えはバラバラだ。

 社是には書いてあるのに浸透していない。

 私がローソンにきて一番感銘を受けたのは、従業員も、スーパーバイザーも部長も、役員も、「日々何のために仕事をしているの?」と聞くと、言い方は各人違うものの、企業理念を話してくれたことだ。

 私は企業が健全に成長していくためのもっとも重大な土台は正しい経営理念の定着と企業文化の醸成だと思う。

 ローソンが掲げている企業理念は、シンプルだけども、未来に通じていく素晴らしい考え方だ。これを絶対に守り、強化したい。この徹底こそが「玉塚イズム」と言っていい。

 

 2つめは、加盟店さんとの強固な関係の構築である。私たちの商売は加盟店さんが元気に頑張らない限り、何も生まれない。ともに繁栄するために各種の取り組みを進めながら、これまで以上に加盟店さんとの強固な関係を構築したい。

 

 3つめは、小商圏における製造小売業として世界一になることだ。

 旧来型のCVSのビジネスモデルには限界がある。少子化、高齢化、人口減少、核家族化、健康志向など市場は大きく変わっているからだ。

 新しい市場には新しいビジネスモデルでお客様に新しい価値を提供していく必要がある。

 まず、小商圏ということでは、物流にチャンスがある。私たちの展開する1万2000店舗、常温・チルド・冷凍の3温度帯で1日3回~5回配送するインフラはものすごい武器である。

 既存物流の効率化を図っていくことはもちろん、現在、私たちが取り組んでいるのは「ラストワンマイル」についてだ。「ローソンキッチン」などを展開することで、結構形は見えてきた。

 

 次に製造業としてお客様に感動していただき、喜んでいただく商品をつくるためには、原材料に遡り、生産プロセスや物流の仕組みまで管理して、可視化して、コントロールする必要がある。さまざまな技術のタネを見出して、お客様が感動する商品をつくっていいきたい。

 その実現に向けては、私たちとシナジーがあり、関連性がある業種、業態のM&A(合併・買収)も積極的に行いたい。製造小売業として世界一になるという文脈で考えれば、無限の可能性がある。

 ただ大事なのは、製造小売業だからと言って、何でもかんでもアセットベースで資産を持つ必要はないということだ。ポイントは、可視化して完全にコントロールすることにある。

 

 次に小売業という意味では、私たちは「Pontaカード」という強力なツールを持っている。会員数は6000万人を超えた。多くの店舗において、売上の6~7割が会員さん由来のものになっている。

 この会員データをベースにして、どの企業よりもお客様を深く理解したい。そのうえで、お客様の求められる商品を生産プロセスまでさかのぼって考え、提供していく。このモデルを磨いていけば、小商圏の領域では必ず世界ナンバーワンになれる。

 

 世界一というのは単に規模を意味するものではない。では、何が世界一の定義かといえば、どこの企業よりもお客様に対して質を提供することだ。

 

 さて、4つめは、強い“規律”と個々人の“自立”の双方を徹底追及することだ。

 企業が強くたくましく成長するには、強い“規律”が大事だ。英語で言えばdiscipline。これをしっかりとしたカルチャーとしてより一層、植え付けたい。

 それとともに、一方では、支社制を敷き、それぞれが自分の頭で考え、その町のニーズにこたえることを推奨している。“自立”して独自に打ち手を講じているのだ。

 たとえば、北海道と沖縄の町は違う。東京の真ん中と田舎の町は全然違う。この違いには支社制を敷き対応する。

 一見、“規律”と“自立”は相反すように見えるが、この2つを徹底的に追及して、強い企業カルチャーをつくっていきたい。

 

 最後は、100人の次世代経営者、リーダーを育成することだ。

 ローソンは、国内のCVSの業務だけでも、どんどん川上にさかのぼっている。だから、さまざまな技術を開発し駆使することが重要になる。あるいはビッグデータを解析して、そこで仮説検証を行うことも重要だ。

 今後は、次世代を見据えたさまざまなシステムインフラをつくっていかなければいけない。海外の事業も拡大するし、M&Aも積極的に進める。すでにリーダーの卵はたくさんいる。その人たちを計画的に抜擢人事する。ジョブローテーションやローソン大学を活用することで、100人の次世代経営者をつくっていきたい。

 

 以上の5点が基本方針だ。この方針のもと、ローソンをしっかりマネージしていく。結論としては4年後の2018年2月期に連結営業利益1000億円。ROE(株主資産利益率)20%を達成したい。

 もちろん、株主の皆様への還元については大変大きな使命であると、深く認識している。配当や株価については、しっかり結果を出していく。

 

 最後に、経営や商売は、スポーツと同じで、経験的な要素が大きいと思う。

 私は39歳でユニクロの社長になった。現在は51歳だが、まだまだ。これからも貪欲に目の前に迫ってくる課題にチャレンジし、どんどん成長していきたい。