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幸楽苑が“二郎”風のメガ盛りを出すねらいと味わいの幸楽苑らしさとは

リーズナブルな価格で親しまれるラーメンチェーンの幸楽苑(福島県/新井田傳社長)が、メガ盛りメニューに挑戦している。チャーシュー6枚、山盛りの野菜、背脂、ニンニクを大胆に組み合わせたその一杯は、二郎系を彷彿させる見た目ながら、幸楽苑ならではの独自性が光る仕上がりになっている。今回は、全国のラーメンを食べ歩くラーメンライターである井手隊長がその魅力を詳しく語る。

幸楽苑が二郎系にチャレンジ!?

 幸楽苑の“メガ盛り”メニューが好調だ。幸楽苑は福島県郡山市に本部を置くラーメンチェーンで、1954年に新井田司氏が福島県会津若松市で開業した「味よし食堂」が始まりである。その後、東北・関東・甲信越地方などに店舗を広げ、現在では青森県から兵庫県まで約400店舗を展開している。

 リーズナブルな価格でラーメンが楽しめる点が人気で、看板商品の中華そばは現在490円。創業当初から値上げはあるものの、今もワンコインで楽しめるのは企業努力の賜物だ。近年はコロナ禍の影響で厳しい経営状況に直面し、新井田傳氏が代表取締役に復帰して、全社一丸で業績回復に挑んでいる。

 一方で、ラーメン業界全体では「二郎系」の人気が根強い。限定商品として提供する店舗が多いが、その人気からレギュラーメニューに加わるケースも少なくない。さらに、カップ麺や冷凍麺などの市販品も好調で、スーパーマーケットやコンビニで必ずと言っていいほど目にする定番商品となっている。

 幸楽苑も例に漏れず、二郎系メニューを導入し、新たな客層の獲得をねらっているようだ。現在発売中の「メガチャーシューめん」のメニュー画面を見ると、黄色い画面背景に「肉・野菜・背脂・ニンニク」と大きく書かれており、二郎系だと一目でわかるデザインだ。普段は落ち着いたイメージの幸楽苑において、このド派手な黄色いメニュー画面は存在感を放っている。

「メガチャーシューめん」を実食!

 早速、「メガチャーシューめん」を注文。価格は税込990円と、看板の「中華そば」の倍以上。幸楽苑のメニューの中では“超高価格帯”の一杯だ。

 具材は、大ぶりのバラチャーシューが6枚、その上に山盛りの野菜、ネギ、ニンニクがトッピングされている。野菜はキャベツ、モヤシ、タマネギ、ニンジン、キクラゲと豊富で、スープには粗めの背脂が浮かび、麺は中太麺を採用している。

 見た目は二郎系を彷彿させるが、スープの色合いは「中華そば」に近い。スープを一口飲むと、幸楽苑らしさをしっかりと感じる。味わいは二郎系を完全に模倣したものではなく、中華そばの進化形と言える。野菜をたっぷりのせてタンメン風に仕上げ、背脂を加え、大量のチャーシューをトッピング。二郎系の迫力を取り入れつつ、幸楽苑ならではの親しみやすさを生かした独自のラーメンだ。

 つまり、幸楽苑らしさを忘れて二郎系に寄せたわけではなく、幸楽苑独自の味づくりの中で完成させたメガ盛りメニューなのだ。一見、パンチが足りないように思えるが、醤油スープ、背脂、ニンニクのバランスが絶妙で、満足度と完成度の高さを両立している。

 むしろ、タンメンらしさが際立ち、野菜をしっかり摂れる満足感に加え、大量のチャーシューで食べ応えも十分だ。これこそ、二郎系の特徴を取り入れながらも、あくまで幸楽苑の味として昇華させた幸楽苑流のラーメンと言える。絶妙に計算された一杯であり、一般的な二郎系ラーメンとは一線を画す。独自性をしっかりと打ち出している点も好印象だった。

メガ盛りだけにとどまらない多彩なメニュー

 メガ盛りメニューの展開はこれだけではない。麺3玉を使った「メガつけめん」が好評につき復活したほか、地元・会津の限定冷酒「会津花春〈大吟醸〉」を楽しめる「庄助セット」など幸楽苑ならではの個性が光るメニューも展開中だ。

 単に流行に乗るだけでなく、自店のこだわりを生かした限定商品をつくり上げる姿勢は素晴らしい。今後の幸楽苑のメガ盛り展開に期待が高まる。