食品宅配はいつでもできる
さて食品の取り扱いについても言及しておきたい。食品は、消費者にとってはもちろん、ウォルマートの事業の重要な部分であることに違いない。
ウォルマートは、サンノゼとサンフランシスコで店舗ピッキング型の食品宅配《ウォルマート トゥゴー(Walmart to go)》を実験している。
食品宅配は市場にどれぐらいの消費者がいるのか、市場密度が必要だ。またたくさん買ってもらえるか、ということでバスケット密度も必要。さらには、1回の配送でトラックにどれだけ積載できるか、積載密度も求められる。
多くの注文を受け、経済的に運営することが求められるが、どのように効率化を図っていくのかは学習してきたつもりだ。わからないのは、世界中のあらゆる市場で食品宅配が求められているかどうかだ。
どこかの企業が先陣を切って市場を開拓する努力を払わなければならないのであれば、ウォルマートにはその準備がある。
消費者が食品宅配して欲しいと手を上げるのを注意深く見守り、上がるならば、すぐに始動したい。
食品市場についてかなり具体的に考えている。サンノゼとサンフランシスコの実験で立証されたことは、既存の「スーパーセンター」から効率よく食品を配達することができることだ。ということは、もし本格導入すれば米国内に約4000の配達拠点があるということになる。
ただし、本格導入の計画は今のところはない。
国際強化エリアは3カ所
最後に海外でのグローバルeコマース事業の展開についても話しておきたい。
現在10カ国でeコマースを展開しているが、強化するのは、中南米、中国、イギリスだ。中南米ではアルゼンチン、チリ、ブラジル、メキシコの4カ国をひとつの地域と考えて事業を運営している。業績は好調で市場の拡大よりも速い速度で伸びている。
たとえば、13年3月は対前期比162%増が図られた。
中国ではネットスーパー「1号店」の株式の51%をウォルマートが取得している。
「1号店」は、日用品を上海市や北京市などの都市部に配達するアジア全域で最も急速に成長するコマースのひとつだ。
イギリスで第2位の小売業であるアズダはイギリスで最高のオンラインリテーラーだと確信している。
世界最大の小売企業の資産と最高水準のコマースを結びつけることで個々の消費者に合わせた買物体験を必ず提供していきたい。
※なお、この続きにつきましては、現在発売中の『チェーンストアエイジ』誌2013年10月15日号(P84~87)をご覧下さい。
<ニール・アッシュ ウォルマートグローバルeコマース事業CEO プロフィール>
前職CBSインタラクティブの社長を経て、2012年1月、ウォルマート入社。グローバルeコマース事業CEO就任。ハーバードビジネススクールでMBA(経営学修士)を、ジョージタウン大学では経営学士を取得する。現在、AMCネットワークとジョージタウン大学のボードメンバーに名を連ねる。